栃木県での生活を安心して送るためには、地域ごとの犯罪傾向を知っておくことが欠かせません。
普段の暮らしの中では「ニュースで大きな事件が取り上げられたとき」くらいしか犯罪を意識しにくいものですが、実際には侵入窃盗や自動車関連犯罪、特殊詐欺など、身近で起こり得る被害が数多く報告されています。
とくに栃木は車社会であるため、自動車盗や車上ねらいといった犯罪が他県よりも目立ちやすい点も特徴の一つです。
この記事では、栃木県警や自治体が公表している公式データをもとに、県全体の犯罪発生状況や地域ごとの傾向を整理します。
さらに、実際に暮らす上でどのような点に注意すべきか、生活者目線でわかりやすくまとめました。
対象となるのは、すでに栃木県にお住まいで日常の防犯意識を高めたい方はもちろん、宇都宮市や小山市などへの移住を検討している方、防犯カメラや地域の安全対策に関心を持ち始めた方です。
地域ごとの特徴を知ることで、自分の生活圏に合った防犯対策を考えるきっかけになるでしょう。
栃木県全体の犯罪率と傾向
栃木県の刑法犯認知件数は、2024年に12,163件となりました。これは前年に比べて231件の増加で、2年連続の増加傾向です。
長期的には2000年代前半をピークに大きく減少してきましたが、直近ではやや持ち直しつつある状況といえます。
重点抑止対象とされる8罪種のうちでは、特殊詐欺や自転車盗、自動車盗、金庫破りなどが増加傾向にありました。
とくに栃木は自動車利用が欠かせない地域性があるため、車関連の犯罪が県全体の発生件数を押し上げる要因となっています。
一方で、侵入窃盗やひったくりなど、一部の犯罪は減少が続いています。防犯カメラの設置や地域の見守り活動の強化が、こうした犯罪の抑止につながっていると考えられます。
人口あたりの犯罪率を全国平均と比較すると、栃木県は大都市圏ほど高くはないものの、決して油断できる数値ではありません。
特に宇都宮市などの都市部では件数が集中する傾向が見られ、生活圏によって体感治安に差が出やすい点も特徴的です。
栃木県全体では依然として犯罪件数の減少傾向は見られるものの、近年は特殊詐欺や自動車関連犯罪など特定の分野で増加が目立っています。
そのため、県民一人ひとりが最新の犯罪動向を知り、生活に合わせた防犯対策を取り入れることが重要です。
(出典: 栃木県警 犯罪統計 認知・検挙件数及び検挙人員の推移 /公益社団法人 栃木県防犯協会「令和6年中の県内の犯罪発生状況(No.210号)」 / 公益社団法人 栃木県防犯協会「令和5年中の県内の犯罪発生状況(No.205号)」)
栃木県の犯罪種別ごとの傾向
犯罪にはさまざまな種類があり、その発生傾向や被害の内容は大きく異なります。
栃木県では、住宅や事務所を狙った侵入窃盗のほか、車社会特有の自動車盗や車上ねらい、さらに高齢者を狙った特殊詐欺などが代表的です。
都市部では粗暴犯や少年による軽犯罪が目立つ一方で、郊外では空き巣や無締りを狙った侵入事件が多く確認されています。
ここからは、栃木県における主な犯罪種別ごとの特徴と、生活者が注意すべきポイントを整理します。
侵入窃盗(住宅侵入・事務所荒らしなど)
栃木県では侵入窃盗が毎年一定数発生しており、住宅や事務所を狙った犯行が中心です。
2024年は全体的に減少傾向がみられるものの、無施錠の住宅や、夜間の無人事務所を狙った被害が報告されています。
侵入窃盗は一度被害に遭うと金銭的損失だけでなく生活の安心感を奪うため、防犯カメラやセンサーライトの活用など物理的対策が有効です。
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車社会特有の犯罪(自動車盗・車上ねらい・部品盗)
栃木は車社会であるため、自動車関連犯罪の比率が高い傾向にあります。2024年4月末時点で、自動車盗は90件(前年比+9件)と増加。
一方で車上ねらいや自転車盗は前年より減少していましたが、依然として県南部や都市部での発生が目立ちます。
とくに小山市や宇都宮市など人口の多い地域では、駐車場や路上での部品盗が確認されており、ハンドルロックやタイヤロックなどの物理的対策が推奨されています。
特殊詐欺(高齢者中心)
特殊詐欺は依然として県民に深刻な被害をもたらしています。
2025年8月時点の暫定集計によれば、オレオレ詐欺が件数・被害額ともに最多であり、高齢者を狙った被害が中心です。
そのほか、架空料金請求詐欺や交際あっせん型の詐欺も確認されており、手口の多様化が進んでいます。
栃木県警は公式サイトで「特殊詐欺被害速報」を随時発表しており、最新の手口を知ることが被害防止につながります。
粗暴犯・少年犯罪などその他の傾向
凶悪事件や粗暴犯は、全国平均と比べて特段突出して多いわけではありません。
しかし宇都宮市などの繁華街では、夜間の傷害事件や暴行が集中する傾向があります。
また少年による万引きや軽犯罪も散発的に発生しており、学校や家庭での見守りや地域ぐるみの防犯活動が求められています。
(出典:栃木県警 犯罪統計 認知・検挙件数及び検挙人員の推移 /公益社団法人 栃木県防犯協会「令和6年中の県内の犯罪発生状況(No.210号)」 / 栃木県警 乗物等盗難防止だより(2024年5月号) /栃木県警 特殊詐欺被害速報(2025年8月暫定値))
地域別の犯罪傾向|犯罪率ランキング(令和5年)
栃木県内でも、市町村ごとに犯罪発生件数と人口規模の違いから「体感治安」には大きな差があります。
特に小山市や那須町といった地域では、人口あたりの犯罪件数が比較的高く出ており、防犯対策をより強く意識する必要があります。
以下は令和5年のデータを基に算出した、県内市町村の犯罪件数ランキングです。
栃木県 犯罪件数ランキング(令和5年|人口1万人あたり)
順位 | 地域 | 認知件数 | 人口(令和5年10月1日) | 1万人あたり件数 |
1位 | 那須町 | 191 | 23,502 | 81.3 |
2位 | 小山市 | 1,357 | 166,975 | 81.3 |
3位 | 野木町 | 181 | 25,034 | 72.3 |
4位 | 上三川町 | 220 | 31,179 | 70.6 |
5位 | 栃木市 | 1,088 | 154,371 | 70.5 |
6位 | 真岡市 | 549 | 78,441 | 70.0 |
7位 | 壬生町 | 266 | 39,341 | 67.6 |
8位 | 芳賀町 | 94 | 14,016 | 67.1 |
9位 | 那須烏山市 | 161 | 24,101 | 66.8 |
10位 | 佐野市 | 741 | 113,346 | 65.4 |
このように、件数だけではなく人口比率で見ると意外な市町村が上位に入ることがわかります。
小山市や栃木市などの人口が多い都市部に加え、那須町や芳賀町といった比較的小規模な自治体も高い数値を示しており、地域ごとの特性に合わせた防犯意識が求められます。
(出典:栃木県警 犯罪統計 市町村別認知件数(令和5年) / 栃木県統計課 令和5年10月1日推計人口)
地域別の犯罪傾向
栃木県では、都市部と郊外、さらには県南・県北で犯罪の傾向に違いが見られます。
宇都宮市や小山市といった人口の多い地域では件数そのものが多く、繁華街や駅周辺に犯罪が集中しやすい傾向があります。
一方で、県北や山間部では件数自体は少ないものの、無施錠の住宅を狙った侵入窃盗や高齢者を狙う特殊詐欺が問題視されています。
ここでは、地域ごとの特徴を整理してみましょう。
宇都宮市など都市部の特徴
宇都宮市は県内で最も人口が多く、令和5年の刑法犯認知件数も3,181件と突出しています。特に中心市街地や繁華街では、夜間の粗暴犯や万引きなどが目立ちます。
人口が多い分、防犯カメラや警察のパトロール網も整っていますが、都市部特有の「人の多さ」を背景に犯罪が集中しやすいのが特徴です。
小山市・足利市など県南エリア
小山市は県内でも人口あたりの犯罪件数が高い地域であり、1万人あたり81.3件と全国的に見ても高い水準です。
また足利市や栃木市といった県南の主要都市も、県内全体の犯罪件数を押し上げています。
交通の利便性が高く、東京通勤圏としての側面を持つことから、駅周辺や駐車場を狙った車上ねらい・部品盗などが目立つ傾向があります。
県北・県西エリアの特徴
日光市や那須塩原市などの県北地域では、件数自体は都市部に比べ少ないものの、観光地を背景にした犯罪や、高齢者を狙った特殊詐欺が問題となっています。
また那須町は人口規模が小さい一方で、1万人あたり81.3件と非常に高い数値を示しており、地域全体の犯罪率の高さが際立っています。
郊外や山間部では「無施錠住宅を狙った空き巣」や「人目のつきにくい場所での盗難」が多いため、生活スタイルに合った防犯対策が不可欠です。
(出典:栃木県警 犯罪統計 市町村別認知件数(令和5年) / 栃木県統計課 令和5年10月1日推計人口)
犯罪種別で目立つ外れ値とその背景
市町村ごとの犯罪データを見ると、全体の傾向から外れた数値を示している地域があります。これらは地域の特性や社会的背景が関係していると考えられます。
- 自動車盗が多い:小山市(認知件数 1,231件)
小山市は交通の要衝であり、国道や高速道路へのアクセスが良いため、自動車盗や部品盗の発生が突出しています。
首都圏方面や県外への「盗難車の流通ルート」として利用されやすい点も影響していると考えられます。
- 粗暴犯の割合が高い:宇都宮市(認知件数 3,384件のうち粗暴犯 195件)
繁華街や飲食店街を抱える宇都宮市では、暴行・傷害といった粗暴犯が他市より多く記録されています。人口が集中することに加え、夜間の人の往来が多いエリアで事件が発生しやすい環境にあります。
- 自転車盗が目立つ:真岡市(認知件数 415件中 窃盗犯 292件)
真岡市は人口規模に対して自転車盗の割合が比較的高いのが特徴です。鉄道駅周辺や学校周辺での駐輪場が狙われやすく、生活導線に密着した犯罪といえます。
- 特殊詐欺の増加:那須塩原市(認知件数 796件のうち知能犯 106件)
那須塩原市では特殊詐欺を含む知能犯が多く確認されています。高齢者人口が多いことや、県北の広いエリアに住む人々がターゲットになりやすいことが背景にあると考えられます。
自治体や地域の防犯対策
犯罪の抑止には、警察の取組だけでなく、市町村や地域住民による活動が欠かせません。
栃木県内では、県警による広報や防犯カメラ設置補助、地域ボランティアのパトロールなど、さまざまな施策が展開されています。
ここでは代表的な取り組みを紹介します。
栃木県警の取り組み(防犯カメラ設置・特殊詐欺対策)
栃木県警では、犯罪統計の公開に加え、毎月「乗物等盗難防止だより」や「特殊詐欺被害速報」を発表し、最新の手口や注意点を広く知らせています。
また、防犯カメラ設置や防犯灯の整備を市町村と連携して進めており、街頭犯罪の抑止につなげています。
特殊詐欺については、金融機関やコンビニとの連携で高齢者の被害防止を強化しています。
都市部の取り組み(宇都宮市・小山市など)
宇都宮市では「安全・安心まちづくり推進計画」を策定し、防犯カメラの設置補助や見守りネットワークの拡充を行っています。
小山市でも、市内主要駅や繁華街を中心に防犯カメラの整備を進め、通勤・通学者の安全確保を図っています。
これらの都市部では人口が集中する分、防犯活動も広域的な連携が求められているのが特徴です。
郊外・地域住民による自主防犯活動
県北や郊外では、自治会や防犯協会を中心とした自主防犯パトロールが積極的に行われています。
壬生町や那須烏山市では「子ども見守り隊」や「青色防犯パトロール」が定期的に活動しており、地域に密着した取り組みが被害の抑止につながっています。
こうした草の根の取り組みは、犯罪の少ない地域でも「安心して暮らせる環境」を維持するために重要です。
(出典:栃木県警 犯罪統計・防犯情報 / 栃木県防犯協会 / 各市町村公式サイト「安全・安心まちづくり計画」)
まとめ
栃木県全体の犯罪発生件数は、長期的に見れば減少傾向にあるものの、令和5年・6年は再び増加に転じています。
特に自動車関連犯罪や特殊詐欺は県内で深刻な課題となっており、県民一人ひとりの注意と対策が欠かせません。
地域別に見ると、宇都宮市や小山市といった都市部は件数が多く、夜間の粗暴犯や駅周辺での窃盗が目立ちます。
一方で、那須町や芳賀町のように人口規模は小さいながらも、1万人あたりの犯罪件数が高い地域も存在します。
つまり「人口が多い都市=危険」とは限らず、それぞれの地域特性に応じた備えが必要です。
- 自動車・自転車の盗難防止にはハンドルロックや二重ロックなど物理的な対策を徹底する。
- 高齢者の家庭では電話でのなりすまし詐欺への注意喚起や留守番電話機能の活用が有効。
- 住宅や事務所では防犯カメラやセンサーライトを導入し、空き巣対策を強化する。
- 県警や自治体が発信する最新の犯罪情報をチェックし、地域の見守り活動に参加する。
こうした日常的な工夫の積み重ねが、地域全体の安全性を高めていきます。栃木県で安心して暮らし続けるために、公式データを参考にしながら、自分や家族に合った防犯対策を実践していきましょう。