【埼玉県の治安】地域別の犯罪件数・発生率まとめ

埼玉県は首都圏の一角を担い、東京のベッドタウンとして多くの人が暮らす地域です。

さいたま市や川口市といった都市部から、自然の残る郊外まで、地域によって街の雰囲気や暮らしやすさは大きく異なります。

その一方で「治安はどうなのか?」という疑問を持つ方も少なくありません。

この記事では埼玉県全体の犯罪発生状況を整理し、「犯罪率(人口比)」と「犯罪件数」の両面から見た治安の良し悪しを解説します。

地域ごとの特徴や、よく発生する犯罪の種類なども解説していきますので、埼玉県への移住を検討されている方は特にご参考ください。

つくば防犯カメラ 代表 菊池 直輝
・茨城県防犯設備協会 所属
・防犯設備士
・第二種電気工事士

埼玉県の治安の全体傾向

埼玉県の刑法犯認知件数は、2000年代初頭をピークに長期的には減少傾向にあります。

特に平成16年(2004年)には181,350件と過去最多を記録しましたが、その後は防犯カメラの普及や地域防犯活動、警察による重点的な取り締まりなどにより減少を続けています。

埼玉県警の統計によると、2021年には40,166件まで減少しました。

その一方で、直近のデータを見ると再びわずかに増加傾向が見られ、2023年には49,653件、2024年には51,667件(前年比+2,014件、+4.1%)となっています(出典:埼玉県 県内の犯罪情勢(令和6年))。

つまり、埼玉県全体としては過去20年間で大幅に犯罪件数が減少しているものの、近年は下げ止まりからやや増加に転じており、注意が必要な状況です。

特に、自転車盗や万引きといった身近な窃盗犯罪が依然として件数の多くを占めており、地域ごとの生活環境や防犯意識が治安の安定に大きく関わっていることがうかがえます。

犯罪率(人口比)から見た治安の悪い地域ランキング

埼玉県警が公開している令和5年(2023年)の統計によると、人口千人あたりの刑法犯認知件数(犯罪率)が高い市町村は以下の通りです。

(県平均:6.8件/千人)(出典:埼玉県警「市町村のすがた(治安)」

順位 市町村名 犯罪率(件/千人) 認知件数
1 八潮市 11.0 1,025
2 蕨市 9.4 695
3 羽生市 9.4 490
4 上里町 9.1 274
5 本庄市 8.8 687
6 草加市 8.5 2,122
7 東松山市 8.4 777
8 松伏町 8.3 230
9 三郷市 8.2 1,154
10 越谷市 8.2 2,772

蕨市・羽生市など小規模自治体が上位に入る理由

犯罪率ランキングでは、蕨市や羽生市といった人口規模の小さな自治体が上位に入る傾向があります。

これは「件数そのものが多い」からではなく、人口に対する割合が高く出やすいことが理由です。

たとえば、人口が少ない町であっても数百件の犯罪が認知されれば、人口比では高い数値になります。さらに、小規模自治体では住宅密集地や商業施設周辺などで軽犯罪が集中する傾向もあり、統計上の「犯罪率」を押し上げてしまいます。

そのため、ランキングを見る際には「地域の規模」と「生活環境の特徴」を踏まえることが重要です。

人口比と件数ベースの違い

治安を把握する上で大切なのは、犯罪率(人口比)と犯罪件数の違いを理解することです。

  • 犯罪率(人口比):人口千人あたりの件数を示すため、少人数の自治体でも犯罪が相対的に多ければ高い数値になります。住民一人ひとりの遭遇リスクを知る指標として有効です。 
  • 犯罪件数(総数):都市部など人口が集中するエリアでは件数が膨らみやすいですが、人口比では平均的というケースもあります。川口市やさいたま市が典型例です。

この2つを併せて確認することで、「総数が多い地域」と「人口比でリスクが高い地域」の両方を理解でき、より実態に近い治安判断が可能になります。

犯罪件数ベースで見た治安の悪い地域ランキング

埼玉県警の統計(2024年)によると、県内で最も犯罪件数が多いのは さいたま市(9,049件)、続いて 川口市(4,529件)越谷市(3,193件) となっています(出典:埼玉県警ホームページ)。

件数ベースのランキングは「どこで事件が多く起きているか」を示す指標であり、人口や都市規模の大きさと密接に関連しています。以下に上位3市の特徴をまとめます。

さいたま市(大宮区など繁華街の影響)

さいたま市は県庁所在地であり、人口・商業規模ともに県内最大の都市です。

2024年の認知件数は 9,049件 と県内で突出して多くなっています。

特に大宮区は県内屈指の繁華街で、飲食店や歓楽街が集まるため夜間のトラブルや窃盗などが発生しやすい傾向があります。

 一方で、浦和区や緑区など住宅中心のエリアは比較的落ち着いた治安環境とされ、同じ市内でも大きな地域差があります。

住まい探しや通勤・通学を考える場合には、区ごとの特徴を確認しておくと安心です。

川口市(東京隣接エリアの特徴と外国人犯罪の印象)

川口市は東京23区に隣接し、都心へのアクセスの良さから人口が急増したベッドタウンです。

2024年の認知件数は 4,529件 で県内2位となっています。

川口駅周辺には商業施設や歓楽街が集まり、自転車盗・万引きといった軽犯罪が目立ちます。

また、夜間営業の飲食店も多く、繁華街特有のトラブルが発生しやすい地域でもあります。

さらに、川口市は在留外国人が多い都市としても知られています。

令和6年(2024年)時点で市内の在留外国人は 約43,700人(市人口の約19%) に達し、県内でも突出しています(出典:埼玉県議会議事概要)。

同年の外国人検挙人員は206人で、県全体の約18%を占めています。

SNSなどで「検挙者の7割が外国人」という情報が拡散されたこともありますが、これは誤解によるもので、実際には「検挙された外国人のうち、中国・ベトナム・トルコ籍の3国籍が約81%を占めていた」という意味でした(出典:日本ファクトチェックセンター)。

このように、印象と統計的事実には差があるため、治安を語る際には公的データを基に冷静に判断することが大切です。

関連記事:来日外国人の犯罪数推移と最新の統計情報

越谷市(大型商業施設周辺の犯罪傾向)

越谷市は2024年に 3,193件 の刑法犯が認知され、県内3位となりました。

特徴的なのは、国内最大級のショッピングモール「イオンレイクタウン」が立地している点です。

人の出入りが非常に多いため、万引き・置き引き・自転車盗といった商業施設特有の犯罪が発生しやすい傾向にあります。

ただし、市内には住宅地や自然が残るエリアも多く、全域で治安が悪いわけではありません。

駅周辺や大型商業施設を利用する際は、持ち物管理や防犯意識を高めることで犯罪リスクを下げられます。

治安が比較的良いとされる地域

人口は多いが犯罪発生率が低い地域

埼玉県の中には人口規模が大きいにもかかわらず、犯罪発生率(人口千人あたりの刑法犯認知件数)が比較的低く抑えられている自治体があります。

たとえば 犯罪件数で1位のさいたま市は人口が多く、駅周辺には商業施設もありますが、2023年の犯罪率は県平均(6.5件/千人)を下回る水準でした(出典:埼玉県警「市町村のすがた(治安)」)。

中でも浦和区は文教地区としても知られ、教育環境が整っていることからファミリー層に人気です。

駅周辺は利便性が高い一方、住宅街は落ち着いた雰囲気があり「都会的な便利さ」と「安心感」を両立できる点が特徴です。

同様に 所沢市上尾市も人口20万人以上の都市ですが、犯罪率は県内平均より低めです。

いずれも鉄道アクセスが良好で通勤・通学に便利な立地でありながら、住宅地としての安心感が評価されています。

移住を考える際には「件数ではなく人口比」を見ることで、実際の暮らしやすさをイメージしやすくなるでしょう。

防犯活動が活発な自治体

地域全体で防犯意識が高く、官民が協力して治安維持に取り組んでいる自治体も安心感につながります。

たとえば さいたま市浦和区や志木市では、防犯パトロール隊や子ども見守り活動が活発に行われています。

埼玉県警のデータでも、こうした自治体では自転車盗や侵入盗といった「生活に密着した犯罪」が減少傾向にあることが確認できます。

また、和光市は防犯カメラ設置を積極的に進めており、市役所主導で商店街や公園にも設置が広がっています。

こうした「見える防犯」は犯罪抑止効果が高く、子育て世帯からも安心感を得やすい取り組みといえます。

移住を検討する際には、事件件数だけにとらわれず、「犯罪率」と「防犯活動の有無」の両方を確認することが、安心して暮らせる街選びのポイントになります。

犯罪の種類別に見る埼玉県の治安

最も多いのは窃盗犯・自転車盗

埼玉県で最も多い犯罪は、身近な窃盗犯です。特に 自転車盗は刑法犯全体の約27.5%を占め、2024年の認知件数は 14,220件 に上りました。

また、オートバイ、自動車盗を含めて増加傾向です(出典:埼玉県警「犯罪情勢」)。

移住を検討している方にとっては、自転車の利用頻度や買い物環境が治安と直結します。

駅前や集合住宅に住む場合は、防犯性の高い二重ロックや駐輪場の利用が安心につながります。

また、商業施設の多い街を選ぶ際は、防犯カメラや警備体制が整っているかを確認するとよいでしょう。

関連記事:【自転車の防犯対策】手口や傾向など全体像を解説

空き巣や侵入盗の発生傾向

空き巣や侵入盗といった「住まいを狙った犯罪」も依然として発生しています。埼玉県警によると、2024年の住宅対象侵入窃盗は1,427件です(出典:埼玉県警 犯罪情勢統計)。

都市部だけでなく、比較的閑静な住宅地も十分に注意が必要で、移住を考える場合は、空き巣対策も重要です。

  • 窓や玄関に補助錠を設置する
  • 防犯カメラやセンサーライトを導入する
  • 住宅街全体での見守り活動があるかを確認する

こうした要素が揃っている街や住宅地を選ぶことで、安心して暮らすことができます。

特殊詐欺の被害

埼玉県では高齢者を中心に、特殊詐欺(オレオレ詐欺や還付金詐欺など)の被害が依然として大きな問題です。

2024年の特殊詐欺被害額は 約53.8億円 にのぼり、件数も増加傾向にあります(出典:埼玉県警「特殊詐欺統計資料」)。

自分自身や家族はもちろん、高齢の親世代の生活環境にも注意が必要です。

自治体によっては、振り込め詐欺対策の電話機を無償貸与しているケースや、防犯講習会を積極的に行っているところもあります。

こうした地域のサポート制度があるかを確認するのも安心材料になります。

関連記事:離れて暮らす高齢両親の防犯対策ガイド

地域別の治安まとめ(市町村ごとの特徴)

さいたま市・川口市・越谷市など都市部

埼玉県内でも人口が多い都市部は、件数ベースでの犯罪数が突出しています。

2024年の統計でも、さいたま市が9,049件、川口市が4,529件、越谷市が3,193件と県内トップ3を占めました(出典:埼玉県警「刑法犯認知件数」)。

都市部は繁華街や大型商業施設があるため、自転車盗・万引きなど「人が集まる場所」で発生する犯罪が多い傾向です。

一方で、都市部には警察署・交番の数も多く、防犯カメラの設置や巡回も活発に行われています。

交通や買い物の利便性を重視したい人にはメリットが大きく、「利便性と引き換えに防犯意識を持つ」ことが求められる地域です。

熊谷市・川越市・所沢市など中核都市

人口20万人以上の中核都市は、都市機能と住宅環境のバランスが取れている一方で、犯罪傾向は都市部ほど偏りがありません。

例えば、熊谷市は1,369件、川越市は2,498件、所沢市は1,952件といずれも県内上位に入りますが、人口比で見ると平均的です(出典:埼玉県警「刑法犯認知件数」)。

こうした都市では、駅周辺や繁華街での軽犯罪が中心ですが、住宅街に入ると落ち着いた雰囲気があります。

学校や医療機関も整備されているため、ファミリー層にとっては暮らしやすさと安心感のバランスが取れた地域といえます。

移住を検討する際は「駅前の利便性」と「郊外の静けさ」をどう組み合わせたいかを考えると良いでしょう。

郊外・農村部の治安傾向

秩父市や美里町、寄居町など、人口規模が小さい郊外・農村部は、犯罪件数そのものは少ないのが特徴です。

ただし、人口に対する割合(犯罪率)では上位に入る町も存在します。

たとえば2023年の上里町は274件の認知件数ながら、人口比で見ると県内4位(9.1件/千人)にランクインしています(出典:埼玉県警「市町村のすがた(治安)」)。

農村部は人の目が少ないため、空き巣や無施錠自転車の盗難が発生しやすい傾向があります。

都市部のように警察力が密ではないため、住民同士の見守りや自治体による防犯活動が重要です。

移住を考える場合は、防犯カメラの設置状況や地域の見守り体制を確認すると安心につながります。

埼玉県での防犯対策

個人ができる自転車盗対策

埼玉県で最も多い犯罪は自転車盗(2024年:14,220件)で、刑法犯全体の27.5%を占めています(出典:埼玉県警「犯罪情勢」)。

駅周辺や集合住宅の駐輪場では特に狙われやすく、ツーロック(二重施錠)が有効とされています。

自宅用としては家庭用の防犯カメラやセンサーライトが普及しており、設置するだけで犯罪抑止効果が高まります。

移住を検討している方は、住まいにこうした防犯設備を取り入れることで、日常生活の安心感を高められるでしょう。

自治体・警察の取り組み例

埼玉県では自治体と警察が連携し、地域ぐるみの防犯対策が推進されています。

県の「埼玉県防犯のまちづくり推進計画(令和7年度~令和11年度)」によると、主な取り組みは以下のとおりです(出典:埼玉県防犯のまちづくり推進計画)。

防犯カメラの設置

令和5年度時点で県内に 9,914台 の防犯カメラが設置されており、公共施設や商店街、通学路などに重点的に整備を進行。

自主防犯団体の活動

埼玉県内には 5,871団体 の自主防犯団体(わがまち防犯帯)が活動しており、子どもの登下校の見守りや地域パトロールを実施(全国1位の規模)

事業者等との連携の拡大

「県内で活動する158の事業者・団体と「埼玉県防犯のまちづくりに関する協定」を締結して「こども110番の家」としてセーフティーステーションの役割を担うなどの防犯活動を実施。

特殊詐欺対策

高齢者を狙った特殊詐欺被害を防ぐため、「特殊詐欺被害防止ワークショップ」の実施(24市町村)や、被害防止啓発のチラシなどで注意喚起。

警察活動の充実強化

警察官1人当たりの人口負担率が全国一のため、平成13年度から29年度にかけては全国最多となる2,895人の警察官増員を実施。あわせて有識者を顧問にサイバー犯罪に対する強化も。

まとめ

埼玉県の治安を見ていくと、人口が集中する都市部に犯罪件数が偏る傾向がある一方で、地域ごとの特徴によって実態は大きく異なることがわかります。

一方で、蕨市や羽生市のように人口規模は小さいものの犯罪率が高い自治体も存在し、単純に「件数」だけで治安を語ることはできません。

移住を検討する際には、件数(規模感)と犯罪率(リスクの高さ)の両方を確認することが重要です。

また、移住候補地には時間帯を変えて訪れてみて、実際に雰囲気を感じる、現地を目で見ることも大事でしょう。

埼玉県で目立つ犯罪は、自転車盗や万引きといった生活に身近な窃盗犯であり、凶悪犯罪が突出して多いわけではありません。

日常的な防犯意識を持つだけでも、リスクが大幅に下がることを期待できます。


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