神奈川県は首都圏の中でも人口が多く、横浜や川崎など都市部から湘南・箱根といった観光地まで、多様な地域性を持っています。
その一方で、地域ごとに犯罪発生率には大きな差があり、住む場所や利用する駅周辺の治安状況を知っておくことは安心・安全な生活に直結します。
本記事では、神奈川県に住んでいて防犯対策を検討している方、これから引っ越しを考えている方や通勤・通学で県内を利用する方に向けて、神奈川県内の市区町村別「犯罪率」や傾向などを公式データをもとに解説していきます。
神奈川県の犯罪発生状況と傾向
神奈川県は、全国的に見ても犯罪発生件数が多い地域のひとつです。
特に横浜市や川崎市といった都市部では人口が集中していることもあり、窃盗や自転車盗など身近な犯罪が目立ちます。
一方で、観光地や住宅地として人気の高いエリアでは、比較的落ち着いた治安状況が保たれている地域もあります。
全体としては減少傾向にありましたが、令和4年以降上昇傾向にあり、防犯カメラの設置や地域の見守り活動などが効果を発揮している一方でさらなる防犯対策が必要と考えられます。
なお地域差は大きいため、住んでいる場所や普段利用するエリアの状況を把握しておくことが重要です。
神奈川県の犯罪件数の推移・前年比・全国比
神奈川県の刑法犯認知件数は、長期的には減少傾向が続いています。
2000年代前半には年間10万件を超える時期もありましたが、令和5年(2023年)には 43,846件 まで減少しました。
ただし、令和4年から令和5年にかけては前年より増加しており、近年の全国的な「犯罪増加傾向」と同じ動きを示しています。
全国全体の刑法犯認知件数は、令和5年に 703,351件 で、前年から増加しました。
この結果、神奈川県は東京都・大阪府・愛知県と並んで、人口規模の大きな都市圏として依然高い水準にあります。
人口あたりの犯罪率で見ても、依然として全国上位に位置する県のひとつです。
(出典:神奈川県警 刑法犯等の認知・検挙状況/警察庁 令和5年犯罪情勢)
神奈川県で目立つ犯罪の種類や特徴的な傾向
神奈川県では、全国的な傾向と同様に「窃盗犯」が大きな割合を占めています。
特に自転車盗や万引きは、横浜市・川崎市といった都市部で目立ち、繁華街や駅周辺での発生が多く報告されています。
一方で、特殊詐欺(いわゆるオレオレ詐欺や還付金詐欺)は高齢者を狙った被害が依然として多く、県警でも重点対策が行われています。
傷害・暴行事件については、繁華街や飲食店が多いエリアでのトラブルが中心であり、横浜駅周辺や川崎駅周辺では深夜帯の発生率が高い傾向があります。
さらに、神奈川県警の時間帯別データをみると、深夜帯だけでなく日中や夕方にも犯罪が集中していることがわかります。
令和5年の認知件数では、16〜19時台に3,080件、12〜15時台に2,986件 が発生しており、帰宅時間帯や買い物時間帯にも一定のリスクが存在します。
つまり、夜間・深夜だけでなく「明るい時間帯」でも犯罪は発生しており、油断できないことが数字から示されています。
地域別にみると、横浜市や川崎市など人口が集中しているエリアでは犯罪認知件数が多く、特に駅前や繁華街での軽犯罪が目立ちます。
相模原市や藤沢市、平塚市なども人口規模が大きく、住宅地と商業地が混在するため、空き巣や車上狙いといった犯罪が発生しやすいとされています。
一方で、県西部の小田原市や秦野市、さらには三浦半島地域などでは、都市部と比べると件数は少なく、治安は比較的落ち着いています。
ただし、観光地として人が集まる鎌倉市や箱根町などでは、観光客を狙ったスリや置き引きが散発的に発生する傾向があり、注意が必要です。
このように、神奈川県の犯罪発生状況には「夜間・深夜のリスク」「昼間や夕方の外出時にもリスクがある点」「都市部・観光地・郊外での地域性の違い」といった複合的な傾向が表れています。
(出典:神奈川県警 刑法犯 罪名別時間帯別 認知件数/神奈川県警 刑法犯等の認知・検挙状況)
鎌倉における外国人関連犯罪の可能性と注意点
鎌倉市は、国内外から多くの観光客が訪れる人気エリアであり、近年は外国人観光客の増加が顕著です。
現時点で「鎌倉市における外国人関連犯罪が急増している」という明確なデータは公開されていません。
しかし、全国的な統計をみると、来日外国人による刑法犯検挙件数は令和5年(2023年)に 15,541件 と前年から増加しています。
罪種別では 万引きが25.8% を占めており、日本人の割合と比べて高い水準です。
さらに共犯事件の割合も高く、外国人犯罪は「組織的に行われやすい」という特徴が指摘されています。
鎌倉市のように観光客が集中する地域では、スリや置き引きといった観光地特有の犯罪に加え、万引きなどの小売店舗での被害が増える可能性があります。
そのため、訪日客の増加に伴い、観光地や商店街では日常的な防犯意識を高めることが重要です。
また、地域住民にとっても、外国人観光客との交流が増える環境において「被害に遭わないための注意点」を再確認することが求められます。
(出典:法務省 犯罪白書 第4編 第9章/警察庁 来日外国人犯罪の情勢)
神奈川県 犯罪率ランキング(市区町村別)
神奈川県の市区町村別に犯罪件数を人口で割り、人口10万人あたりの犯罪率を算出しました。
令和5年(2023年)の確定値をもとにしたランキング上位10位は以下のとおりです。
| 順位 | 地域 | 認知件数 | 人口 | 人口1万人あたり犯罪率 |
| 1位 | 横浜市 西区 | 1,476件 | 約10万人 | 147.6件 |
| 2位 | 横浜市 中区 | 1,774件 | 約15万人 | 118.3件 |
| 3位 | 川崎市 川崎区 | 2,638件 | 約23万人 | 114.7件 |
| 4位 | 相模原市 中央区 | 1,724件 | 約28万人 | 61.6件 |
| 5位 | 川崎市 幸区 | 1,045件 | 約17万人 | 61.5件 |
| 6位 | 大和市 | 1,385件 | 約24万人 | 57.7件 |
| 7位 | 小田原市 | 1,090件 | 約19万人 | 57.4件 |
| 8位 | 相模原市 南区 | 1,541件 | 約27万人 | 57.1件 |
| 9位 | 平塚市 | 1,467件 | 約26万人 | 56.4件 |
| 10位 | 座間市 | 731件 | 約13万人 | 56.2件 |
上位には横浜市・川崎市といった都市中心部が並び、特に 横浜市西区・中区、川崎市川崎区は人口あたりの犯罪率が突出 しています。
一方で、相模原市中央区や南区、さらには小田原市、大和市といった地域も上位に入っており、都市部以外でも一定のリスクがあることがうかがえます。
(出典:神奈川県警 刑法犯等の認知・検挙状況(市区町村別統計 令和5年確定値))
ランキング上位地域の特徴
神奈川県内で人口10万人あたりの犯罪率が高い地域には、横浜市西区・中区、川崎市川崎区といった都市中心部が並びました。
横浜市西区は横浜駅周辺を抱えるエリアで、商業施設や繁華街が集積しており、人の往来が極めて多いことからスリや置き引き、万引きなどが発生しやすい環境にあります。
中区は関内・伊勢佐木町・みなとみらいといった観光地や繁華街を抱えており、夜間の飲食店街でのトラブルや観光客を狙った犯罪が目立ちます。
川崎市川崎区は川崎駅を中心に商業・工業エリアが混在しており、夜間人口の多さや繁華街の密集により粗暴犯や窃盗犯の件数が高い傾向にあります。
一方で、相模原市中央区や南区、小田原市、大和市、平塚市などは「横浜や川崎ほどの大都市ではないものの、人口規模が比較的大きい都市」である点が共通しています。
これらの地域では住宅街と商業施設が近接しており、自転車盗や車上狙い、万引きといった身近な犯罪が多いことが特徴です。
また、座間市は人口規模がやや小さいながらも上位に入りました。
住宅密集地が多く、比較的若い世代の人口比率が高いことが犯罪率の高さにつながっている可能性があります。
このように、ランキング上位地域は「繁華街・観光地を抱える都市中心部」と「人口規模が大きく、生活圏が広い中核都市」が中心となっており、都市特有の課題が治安に反映されているといえます。
(出典:神奈川県警 刑法犯等の認知・検挙状況(市区町村別統計 令和5年確定値))
犯罪率が低い地域の特徴
神奈川県内には、都市部と比べて犯罪率が低く、治安が比較的安定している地域もあります。
横浜市の郊外エリアにあたる泉区や栄区、瀬谷区などは人口規模が小さめで、住宅地が中心の落ち着いた環境が特徴です。
こうした地域では、繁華街や大規模商業施設が少なく、人の出入りが限定的であることから犯罪件数が抑えられています。
さらに県西部の秦野市、南足柄市、愛川町、清川村なども、自然環境に恵まれた地域性から全体的に犯罪率は低い傾向にあります。
特に秦野市や南足柄市は、人口規模に対して認知件数が少なく、県内でも「比較的安全な居住地」として位置づけられています。
また、三浦市や葉山町などの三浦半島地域も、観光で訪れる人は多いものの犯罪件数は低めに推移しています。
地域のコミュニティが強く、住民同士の見守り意識が高いことも背景にあると考えられます。
このように、犯罪率が低い地域の共通点として「住宅地中心で繁華街が少ない」「人口規模が小さめ」「地域コミュニティが維持されている」といった特徴が挙げられます。
都市部へのアクセスを重視する人にとっては利便性とのバランスを考える必要がありますが、生活環境の安全性を優先する人にとっては有力な選択肢となるでしょう。
(出典:神奈川県警 刑法犯等の認知・検挙状況(市区町村別統計 令和5年確定値))
犯罪種別で目立つ外れ値
神奈川県内の市区町村別データをみると、総数だけでなく特定の犯罪種別で突出している地域があります。
まず、自転車盗や万引きといった窃盗犯は特定の都市部に集中しています。
横浜市港北区では 自転車盗が436件 と市内でも突出して多く、大学や高校が集まる地域特性が影響していると考えられます。
また横浜市中区では 万引き326件、スリ37件 が記録され、伊勢佐木町や観光地での被害が目立ちます。
川崎市川崎区でも 自転車盗1,287件 が発生しており、駅周辺の駐輪場利用者が多い環境が背景にあります。
次に、粗暴犯(暴行・傷害など)の件数も繁華街に集中しています。
横浜市中区では 暴行213件、傷害99件 が発生し、夜間の飲食店街でのトラブルが多いことを示しています。
横浜市西区でも 暴行142件 が認知され、横浜駅周辺の繁華街での事件が影響しています。
さらに、知能犯(詐欺)も外れ値として注目されます。
横浜市中区では 詐欺174件、川崎市川崎区では 詐欺187件 が記録され、特殊詐欺や還付金詐欺の多発地域となっています。
一方で、凶悪犯(殺人・強盗・放火など)は件数自体は少ないものの、横浜市中区や川崎市川崎区で相対的に高い傾向が見られました。
このように、犯罪種別ごとにみると「港北区=自転車盗」「中区=万引き・スリ・粗暴犯」「川崎区=自転車盗・詐欺」といった地域ごとの外れ値が浮かび上がります。
(出典:神奈川県警 刑法犯等の認知・検挙状況(市区町村別統計 令和5年確定値))
神奈川県内の特徴的な防犯取り組み事例
神奈川県内の市町村や県では、それぞれの地域特性に合わせた防犯対策が進められています。
- 横浜市
「地域の防犯力向上緊急補助金」制度を導入し、自治会や町内会が実施する防犯パトロールや防犯カメラ設置に補助金を交付しています。
大規模都市での犯罪抑止を地域主体で支える仕組みとして注目されています。
- 川崎市
防犯カメラ設置に関する補助金制度に加えて、高齢者向けに「迷惑電話防止機器」を無償貸与しています。
特殊詐欺対策として、通信被害への対応を強化している点が特徴です。
- 神奈川県
「自主防犯団体あんぜんあんしんネットワーク」を運営し、登録団体に対する活動支援や保険制度を整えています。県全体で住民参加型の防犯体制を推進している点が大きな特徴です。
また、住宅防犯の観点では「かながわ安心・安全な住まいづくり相談窓口」が設けられています。
防犯設備士による相談が受けられ、窓・扉の防犯強化や防犯フィルムの設置など、個人レベルでの安全確保を後押ししています。
- 湘南エリア(鎌倉市・藤沢市など)
観光地や移住先としての人気が高まっていることから、地域独自の対策も進んでいます。
- 鎌倉市
「防犯灯のLED化」や「防犯カメラの駅周辺設置」を進め、観光客と住民の双方に安心感を提供しています。
- 藤沢市
「青色防犯パトロール」の登録団体数が県内でも多く、住民参加型の見守り活動が定着しています。
こうした取り組みは、移住先としての安全性を高める大きな要素となっています。
このように、神奈川県内の防犯対策は「都市部の大規模補助制度」「県全体のネットワーク支援」「湘南地域の観光・移住ニーズへの対応」と、多層的に展開されています。
(出典:横浜市 防犯力向上緊急補助金/川崎市 防犯カメラ設置補助金/神奈川県 自主防犯団体あんぜんあんしんネットワーク/神奈川県 安心・安全な住まいづくり相談窓口)
生活者目線でできる防犯対策
神奈川県は人口が多く都市部と観光地が混在するため、生活スタイルによって直面する防犯リスクも異なります。
そこで、通勤・通学者、在住者、観光客それぞれが意識できる防犯対策を整理しました。
通勤・通学者の場合
朝夕の混雑時や夜間の帰宅時間帯はスリや痴漢、暴行事件のリスクが高まります。
人通りの多い道を選ぶことや、駅や商業施設に設置された防犯カメラがあるエリアを通ることで安全性を高められます。
また、自転車通学者は駐輪場の利用時に必ず二重ロックを行い、盗難対策を徹底することが重要です。
県内在住者の場合
住宅侵入や空き巣対策として、窓や扉の補助錠、防犯フィルムの設置、防犯灯の点灯を心がけることが有効です。
自治体が設けている防犯カメラ補助制度を活用し、自宅周辺や町内に防犯カメラを導入することも安心につながります。
また、高齢者世帯は特殊詐欺被害のリスクが高いため、迷惑電話防止機器の導入や留守番電話の活用も有効です。
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観光客の場合
鎌倉市や藤沢市などの湘南エリア、横浜市中区や西区の観光スポットでは置き引きやスリが発生しやすいため、手荷物から目を離さないことが基本です。
繁華街や観光地では夜遅い時間帯を避け、できるだけ複数人での行動を意識することが安全につながります。
最後に共通のポイントとして、犯罪発生が多い地域は「時間帯によるリスクの変化」が大きいことが挙げられます。
昼間や夕方でも被害が一定数発生しているため、明るい時間帯であっても油断せず、防犯意識を持って行動することが大切です。
(出典:神奈川県警 刑法犯等の認知・検挙状況/神奈川県警 罪名別時間帯別認知件数)
まとめ
神奈川県は横浜市や川崎市といった都市部を抱え、全国的にも犯罪件数が多い地域のひとつです。
令和5年のデータをみると、人口10万人あたりの犯罪率が特に高いのは横浜市西区・中区、川崎市川崎区など繁華街や商業施設が集中する地域でした。
一方で、秦野市や南足柄市などの郊外エリアは比較的犯罪率が低く、住宅地中心の落ち着いた治安が維持されています。
また、地域ごとに目立つ犯罪種別には特徴があり、港北区では自転車盗、中区では万引きや粗暴犯、川崎区では詐欺などが突出していました。
こうした数字や傾向を把握することで、自分の生活スタイルに合わせた防犯意識を持つことができます。
神奈川県や各市町村でも防犯カメラ設置の補助制度や地域パトロールなど多様な取り組みが進められています。
住民や観光客にとって安全で安心な環境をつくるためには、行政や地域活動に加え、個人レベルの日常的な工夫が欠かせません。
防犯カメラの設置、通勤・通学路の選び方、住宅の防犯強化など、できることを積み重ねることで、犯罪を未然に防ぎ、安心して暮らせる地域づくりにつながります。