日常生活の安全を守るうえで、地域ごとの犯罪傾向を把握することはとても重要です。
特に群馬県は前橋市や高崎市といった都市部から、山間地域や農村地域まで幅広い環境を持ち、それぞれの地域で異なる特徴が見られます。
人口規模や交通の便、観光地の有無などによって犯罪の種類や発生率に差が出ることも少なくありません。
この記事では、群馬県に在住で防犯対策に興味がある方や、移住を検討されている方に向けて、県全体の犯罪率や傾向を整理するとともに、市町村ごとの犯罪件数をまとめて解説していきます。
犯罪種別ごとの特徴や地域別の傾向、突出して多い犯罪の外れ値などについてもまとめていますので、ご参考ください。
群馬県の犯罪率と傾向
群馬県における令和5年の刑法犯認知件数は 13,326件 でした。
前年(令和4年)は 10,159件 だったため、対比すると大幅な増加傾向が見られます。
全国的には犯罪件数が長期的には減少傾向にある中で、群馬県ではこのような上昇が目立つ年となりました。
この認知件数を人口1万人あたりで換算すると、都市部とそれ以外の地域とで差が出る傾向にあります。
前橋市・高崎市など人口集中地域では窃盗・自転車盗が中心となっており件数が多くなる傾向です。
対して、人口が少ない地域では件数自体は抑えられているものの、「侵入盗」や「車上狙い」など特定の犯罪が突出している市町村も存在します。
このように、群馬県でも他地域と同じく全体の認知件数が前年に比して拡大した点と、 地域別に犯罪傾向が大きく異なるという特徴が見えてきます。
群馬県の犯罪種別ごとの傾向
群馬県における令和5年の刑法犯認知件数は 13,326件 でしたが、令和6年には 14,593件(前年比+9.5%) に増加しました。
全国的に長期的な減少傾向が続く中で、群馬県では逆に増加に転じている点が特徴です。
窃盗犯の傾向
最も多いのは「窃盗犯」で、特に万引きや自転車盗が大半を占めています。
- 自転車盗: 1,548件 → 1,784件(+15.2%)
- 万引き: 1,743件 → 1,861件(+6.8%)
都市部では駅周辺や商業施設を中心に被害が多く、若年層や高齢者が被害者になるケースが目立ちます。
住宅侵入犯罪の増加
住宅対象侵入窃盗は 582件 → 700件(+20.3%) と増加しました。
特に空き巣は 337件 → 490件(+45.4%) と大幅に増えており、県内全体で警戒が必要です。
一方で「忍込み(就寝時の侵入)」は減少しましたが、「居空き(在宅時の侵入)」は 8件 → 26件(+225%) と大幅に増えており、昼間・在宅中でも安心できない状況が見られます。
自動車関連犯罪
自動車関連犯罪も大きく増加しました。
- 自動車盗: 191件 → 274件(+43.5%)
- オートバイ盗: 78件 → 143件(+83.3%)
太田市や伊勢崎市などの工業都市、幹線道路沿いの地域で特に目立ち、県外への持ち去りや部品盗難のリスクが高まっています。
減少傾向のある犯罪
一方で、器物損壊は 975件 → 841件(−13.7%) と減少しました。
また、自販機ねらいも 91件 → 84件(−7.7%) と減少しており、防犯カメラや設置環境改善の効果がうかがえます。
このように、群馬県では「窃盗犯の中でも空き巣や自動車盗が大幅に増加」「器物損壊など一部は減少」という対照的な傾向が見られます。
都市部・工業地域・農村地域とそれぞれ異なる課題が浮き彫りとなっており、防犯対策の重点を絞る必要性が高まっています。
(出典: 群馬県警 統計(治安・交通等) )
群馬県の犯罪件数・犯罪率ランキング
以下は、群馬県内の市町村ごとの犯罪認知件数を人口1,000人当たりに換算したランキングです。
人口規模が大きい都市部だけでなく、小規模自治体においても発生率が高い地域があり、件数だけでは見えにくい地域特性を把握することができます。
順位 | 市町村 | 犯罪件数 | 人口1,000人当たり件数 |
1 | 伊勢崎市 | 1,869件 | 8.8件 |
2 | 嬬恋村 | 80件 | 8.7件 |
3 | 草津町 | 53件 | 8.7件 |
4 | 大泉町 | 363件 | 8.7件 |
5 | 千代田町 | 92件 | 8.3件 |
6 | 太田市 | 1,882件 | 8.5件 |
7 | 昭和村 | 52件 | 7.4件 |
8 | 館林市 | 550件 | 7.4件 |
9 | 前橋市 | 2,449件 | 7.4件 |
10 | みどり市 | 363件 | 7.3件 |
(出典: 群馬県警 刑法犯認知件数(市区町村別) )
この結果を見ると、伊勢崎市や太田市といった都市部が上位に位置している一方で、草津町や嬬恋村など人口の少ない地域でも高い発生率が示されています。
人口規模に関わらず、地域特性によって犯罪発生の傾向が大きく異なることがわかります。
地域別の犯罪傾向
群馬県内の犯罪発生状況を市町村ごとに見ると、地域によって傾向に大きな違いが見られます。
前橋市では令和5年に 2,449件(人口1,000人当たり7.4件)、高崎市では 2,200件(同6.0件) が認知されており、人口規模の大きな都市部では件数が多く、自転車盗や万引きなど日常生活に密接した窃盗犯が中心となっています。
特に駅周辺や商業施設が集まる地域では、若年層を中心とした軽犯罪が件数を押し上げる傾向が確認できます。
一方で、伊勢崎市(1,869件、同8.8件)や太田市(1,882件、同8.5件)といった工業都市では、自動車関連の犯罪や部品盗難の割合がやや高くなっています。
高速道路のアクセスが良いこともあり、県外から侵入して広域的な犯罪に利用されやすい背景があると考えられます。
農村地域や山間部では件数自体は少ないものの、侵入盗や農作物の盗難など、地域特有の犯罪が散発的に見られます。
例えば嬬恋村(80件、同8.7件)や草津町(53件、同8.7件)は人口が少ないにもかかわらず、発生率が高い地域として位置付けられます。
こうした地域では、人口減少や高齢化により留守宅が多いことが要因のひとつとなっています。
このように、群馬県の犯罪傾向は「都市部では窃盗犯」「工業都市では自動車関連犯罪」「農村部では侵入盗」といったように、地域ごとの特色が反映される形で表れています。
(出典: 群馬県警 刑法犯認知件数(市区町村別) )
犯罪種別で目立つ外れ値
群馬県内の市町村を犯罪種別ごとに比較すると、特定の地域で特定の犯罪が突出している傾向が見られます。
自転車盗
自転車盗は 前橋市(462件)、高崎市(374件)、伊勢崎市(372件) に集中しています。
人口規模が大きく、通学や通勤で自転車利用者が多い都市部で顕著に発生しており、駅周辺や集合住宅での被害が目立ちます。
自動車関連犯罪
太田市(210件) や 伊勢崎市(372件) は、自動車盗や車上ねらいの件数が高い地域です。
両市は北関東自動車道や東北自動車道へのアクセスが良く、県外へ車両を移動させやすい地理的条件が背景にあると考えられます。
空き巣・侵入盗
富岡市(21件)、藤岡市(46件) など、都市規模が比較的小さい地域でも侵入盗の件数が多い傾向があります。
農村部や住宅が分散している地域では、留守宅を狙った空き巣が発生しやすいと見られます。
観光地特有の傾向
草津町(48件) や 嬬恋村(56件) では、件数は都市部ほど多くないものの、人口規模を踏まえると高い発生率を示しています。観光客が多く訪れる地域では、置引きや軽犯罪が発生しやすい点が特徴的です。
このように、群馬県では「都市部=自転車盗」「工業都市=自動車関連犯罪」「農村部=侵入盗」「観光地=観光客由来の犯罪」という地域ごとの外れ値が確認されます。
地域特性を踏まえることで、防犯対策の重点をどこに置くべきかがより明確になります。
(出典: 群馬県警 刑法犯認知件数(市区町村別) )
地域ごとの防犯対策の取り組み
群馬県内の市町村では、地域の特性に応じた防犯対策が展開されています。
都市部では生活に身近な犯罪、工業都市では自動車関連犯罪、観光地では観光客を対象とした犯罪など、地域事情に合わせた取り組みが特徴です。
前橋市
前橋市では、防犯灯の移設・撤去にかかる経費の一部を補助する制度が設けられています。
また、過去には養豚農場を対象に防犯カメラや防犯ゲートの設置費用を補助する制度が実施され、畜産業を狙った盗難対策として活用されました。(出典: 前橋市 防犯灯移設・専用柱撤去補助金 / 日本経済新聞 「群馬・前橋市、養豚農場の盗難防止へ防犯カメラ補助」 )
千代田町
千代田町では、70歳以上の高齢者がいる世帯を対象に、防犯カメラやセンサーライト、テレビドアホンなどを設置する費用を助成する制度があります。(出典: 千代田町 防犯対策補助金制度 )
伊勢崎市
伊勢崎市では、警察や防犯委員と協力して年4回の夜間防犯パトロールを実施しています。
また、防犯地域パトロール協力員を募集し、通学路や生活道路の見守り活動も行われています。(出典: 伊勢崎市 夜間防犯パトロール / 伊勢崎市 防犯地域パトロール協力員制度 )
太田市
太田市では、住民参加型の「わんわんパトロール隊」など独自の防犯活動が展開されています。
また、防犯パトロール隊による活動が行方不明者の早期発見につながった事例も報告されています。(出典: 太田市 わんわんパトロール隊 / 警察庁 防犯パトロール事例 太田市 )
群馬県警(全県)
群馬県警では「青色防犯パトロール制度」を運用し、車両を用いた巡回によって犯罪の抑止を図っています。
さらに、県民防犯運動の一環として特殊詐欺や自転車盗防止に関する広報啓発キャンペーンも実施されています。(出典: 群馬県警 青色防犯パトロール制度 / 群馬県 県民防犯運動実施計画 )
群馬県における外国人犯罪の傾向
群馬県では、外国人住民の数が全国的にも多い地域のひとつであり、工業都市を中心に外国人労働者が数多く暮らしています。
そのため、来日外国人による刑法犯検挙数も一定数確認されており、地域特性が犯罪統計に色濃く反映されています。
以下では、群馬県における外国人犯罪の傾向について、データをもとに整理します。
外国人犯罪の一定割合
群馬県内では、来日外国人による刑法犯検挙数が年間で一定数報告されています。
特に製造業・物流業が盛んな太田市・大泉町周辺など、外国人労働者の居住割合が高い地域で数値が反映されやすい傾向が考えられます。
犯罪種別の特徴
検挙事例では、万引きや自転車盗といった窃盗犯が目立ちます。
また、交通関係法令違反や入管法違反など、日本人には少ない「在留資格や生活環境に関連する違反」が一定数含まれている点が特徴的です。
地域性との関連
群馬県はブラジルやベトナムなど外国人労働者が多く居住している地域であり、特に太田市・大泉町・伊勢崎市といった工業都市では人口比で外国人が多いことが知られています。
このため、外国人による検挙件数が多いのは、犯罪発生率が特段に高いというよりも、地域の人口構成に占める外国人比率が大きいこと が背景にあると考えられます。
防犯上の示唆
外国人による犯罪件数が報告される一方で、同じ地域では外国人住民が地域経済を支える重要な存在でもあります。
そのため防犯対策は「外国人排斥」ではなく、地域コミュニティへの参加促進や多言語での防犯啓発、雇用環境の改善といった共生を前提にした取り組みが求められます。
(出典: 群馬県警 統計(治安・交通等) )
関連記事:来日外国人の犯罪数推移と最新の統計情報
まとめ
群馬県の犯罪発生状況を見てみると、令和5年は全体で 13,326件 と前年から増加傾向にありました。
市町村ごとに人口1,000人あたりの件数を比較すると、伊勢崎市や太田市といった工業都市、草津町や嬬恋村といった観光地が上位に入り、地域特性が犯罪の発生率に影響していることが分かります。
犯罪種別では、前橋市や高崎市を中心に自転車盗が多く、太田市や伊勢崎市では自動車関連犯罪が目立ちました。
さらに農村部では侵入盗、観光地では観光客を背景とする軽犯罪が発生しており、都市部と農村部、観光地で異なる課題が浮かび上がっています。
各市町村では、防犯カメラの設置助成や地域パトロール、広報活動など、地域事情に即した防犯対策が進められています。
ただし、統計で見える数値だけで治安を判断するのではなく、実際に暮らす人々の声や地域の雰囲気もあわせて確認することが大切です。
移住や生活拠点を検討する際には、こうしたデータを参考にしつつ、現地での実感も踏まえた判断が望まれます。