【福島県の治安】地域別の犯罪件数・発生率まとめ

近年、福島県では全国的な減少傾向に反して犯罪件数が増加傾向にあり、生活に身近な窃盗や特殊詐欺の被害が目立っています。

地域によっては自動車関連犯罪や観光地での軽犯罪など、地理的・社会的な要因が色濃く反映されているのも特徴です。

この記事では、福島県内に居住していて防犯対策に興味がある方、移住・転勤などで福島県での生活を検討している方に向けて、福島県全体の犯罪率と傾向を整理し、市町村ごとの犯罪件数ランキングや、犯罪種別ごとの特徴や地域別の傾向、外国人による犯罪動向なども含めて、最新のデータに基づき詳しく解説していきます。

福島県の犯罪率と傾向

福島県の刑法犯認知件数は、令和6年に 8,844件(前年比+841件、+10.5%) となり、前年の 8,003件 から大幅に増加しました。

全国的には犯罪件数の減少傾向が続いていますが、福島県では2年連続で増加しており、東北地方の中でも上昇幅が大きい地域です。

人口1,000人あたりの犯罪件数に換算すると、おおよそ 4.9件。これは東北6県の中でも宮城県・山形県に次ぐ高さで、特に都市部での窃盗や知能犯の増加が影響しています。

犯罪種別では、「窃盗犯」が全体の約7割を占めており、生活に身近な万引きや自転車盗が多くを占めています。

一方で、令和6年は「知能犯(詐欺など)」が 516件(前年比+34.4%) に増加し、なりすまし詐欺やキャッシュカード詐欺など、高齢者を狙った手口が顕著でした。

また、沿岸部の「浜通り」地域では自動車盗や部品ねらいが多く、中通り地方では万引きや特殊詐欺、会津地方では観光地を中心とした置き引きなどが発生しています。

県内では地域によって犯罪の傾向が異なり、都市・農村・観光地それぞれに特徴的な課題が見られます。

(出典: 福島県警 刑法犯認知・検挙状況(令和6年確定値)

主要3都市(郡山市・福島市・いわき市)の犯罪傾向

福島県内の主要3都市では、共通して「窃盗」「詐欺」が高い割合を占めていますが、都市の性格によって犯罪の構成が明確に異なります。地域特性に応じた防犯施策の強化が今後の課題です。

郡山市:県内最多の犯罪件数、生活に身近な犯罪が中心

令和6年の刑法犯認知件数は 1,854件(前年比+267件) で、福島県内で最も多い結果となりました。

全体の約21%を占めており、万引き・自転車盗・部品ねらい など生活圏内で発生する犯罪が中心です。

また、特殊詐欺被害も中通り地方で最も多く報告されており、金融機関と連携した高齢者向けの注意喚起が進められています。

一方で、郡山駅周辺や国道沿いの商業エリアでは夜間の犯罪も増加傾向にあり、街灯や防犯カメラの整備が課題です。

福島市:窃盗と詐欺の増加が顕著、都市型犯罪の傾向

令和6年の認知件数は 1,632件(+7件) とほぼ横ばいでしたが、窃盗犯(とくに万引き) が増加。

また、特殊詐欺(なりすまし・架空料金請求)による被害が多く、高齢者の被害率が高い地域 でもあります。

福島駅周辺の繁華街や商業施設での軽犯罪、住宅街での侵入盗など、都市生活に密接した犯罪構成が特徴です。

市全体では防犯カメラの設置や地域パトロールが強化されており、商業地域では防犯協定の締結が進められています。

いわき市:沿岸地域ならではの自動車関連犯罪が増加

いわき市の認知件数は 1,165件(前年比−42件) とわずかに減少しましたが、自動車関連犯罪(自動車盗・部品ねらい・車上ねらい) が増加傾向にあります。

港湾・工業地域を抱えることから、県外ナンバー車両を狙った犯行も報告されており、広域的な移動を伴う犯罪 が多い点が特徴です。

一方で、万引きや自転車盗などの生活型犯罪はやや減少しており、防犯カメラや商店街の自主警備活動が一定の成果を上げています。

(出典: 福島県警 刑法犯認知・検挙状況(令和6年確定値)

福島県の犯罪種別ごとの傾向

福島県では、2018年から2024年にかけて 窃盗犯が全体で約50%増加 しました。特に乗り物関連犯罪(自転車盗・自動車盗・部品ねらい)の増加が顕著で、生活圏内・通勤圏内での被害が多発しています。

一方で、強盗やひったくりなどの凶悪犯罪は減少しており、県全体では「生活密着型犯罪」が主流となっています。

自転車盗

2024年(令和6年)の自転車盗認知件数は 734件 で、2018年(401件)からおよそ 1.8倍 に増加しました。発生場所は駅周辺や学校、集合住宅の駐輪場が中心で、郡山市・福島市・会津若松市に集中しています。

通学・通勤時間帯の被害が多く、防犯意識の低い短時間駐輪が狙われやすい 傾向にあります。

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自動車盗・部品ねらい

自動車盗は 87件 → 159件(+82.8%)、部品ねらいは 73件 → 126件(+72.6%) と大幅増。

いわき市や南相馬市など、沿岸部の幹線道路沿いで発生が多く、県外へ車両や部品を持ち去る手口も確認されています。

盗難防止装置付き車両であっても被害が発生しており、スマートキー信号の中継(リレーアタック)対策 が求められています。

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車上ねらい・自販機ねらい

車上ねらいは 208件 → 263件(+26.4%)、自販機ねらいは 49件 → 58件(+18.4%) と、いずれも増加。

深夜から早朝にかけて駐車場・路上での被害が多く、人気の少ないエリアでの防犯カメラ設置 が抑止効果を上げています。

オートバイ盗・ひったくり

オートバイ盗は 41件 → 65件(+58.5%)。郡山市・福島市で若年層による犯行が目立ちます。 一方で、ひったくりは 12件 → 8件(−33.3%) と減少傾向にあり、女性や高齢者を狙った犯行は少なくなっています。

(出典: 福島県警 刑法犯認知・検挙状況(令和6年確定値) / 福島県警統計データ(2018〜2024年 CSV))

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地域別の犯罪傾向

福島県内の犯罪発生状況を地域ごとに見ると、「浜通り」「中通り」「会津」で傾向が大きく異なります。産業構造や人口密度、観光地の有無などが犯罪の特徴に影響しています。

浜通り地域(いわき市・南相馬市など)

浜通りでは、自動車関連犯罪(自動車盗・部品ねらい・車上ねらい) が特に多く見られます。沿岸部には工業地帯や港湾が多く、県外への車両・部品の持ち出しが容易であることが背景にあります。

また、震災復興以降に増えた工事車両・建設資材を狙った盗難も発生しており、資材置き場や駐車場の防犯対策 が課題です。

一方で、住宅街での空き巣や侵入盗は減少傾向にあります。

中通り地域(郡山市・福島市・二本松市など)

中通りは、福島県の中でも最も人口が集中する地域で、生活型犯罪(万引き・自転車盗・特殊詐欺) が多く発生しています。

郡山市と福島市を中心に商業施設や駅周辺の人の往来が多く、被害の多くは「生活圏の中で発生する軽犯罪」です。

また、高齢者を狙った「なりすまし詐欺」や「キャッシュカード詐欺」が増加しており、県全体の被害件数の約6割を中通り地域が占めています。

警察・自治体・金融機関が連携して防犯啓発活動を強化しているものの、依然として警戒が必要な状況です。

会津地域(会津若松市・喜多方市など)

会津地域では、観光地や宿泊施設周辺での軽犯罪(置き引き・スリなど)が散発的に発生しています。

特に会津若松市では観光シーズン中の万引き・置き引きの報告があり、観光客由来の犯罪が一因と考えられます。

また、農村部では侵入盗が散発的に発生しており、高齢化や空き家の増加が背景にあると見られます。

一方で、地域住民による防犯パトロールやカメラ設置が進み、近年は犯罪抑止効果が出始めています。

犯罪種別で目立つ外れ値

福島県全体の統計をみると、特定の犯罪が突出して多い地域や犯罪種別が確認されます。特に自動車盗と特殊詐欺は前年より急増しており、県全体の犯罪増加の大きな要因となっています。

自転車盗

令和6年の自転車盗認知件数は 734件(前年比+12.8%) で、全刑法犯の約8%を占めます。

発生件数が多いのは 郡山市(約230件)福島市(約190件)会津若松市(約90件) の3市で、都市部の駅周辺や集合住宅駐輪場での被害が集中しています。

防犯カメラ設置や二重ロックの呼びかけが行われていますが、短時間駐輪による無施錠被害 が依然として多い状況です。

自動車盗・部品ねらい

自動車盗は 159件(前年比+82.8%)、部品ねらいは 126件(前年比+72.6%) と、いずれも大幅増加。いわき市や南相馬市など沿岸部のほか、郡山市・白河市でも発生しています。

とくに 幹線道路沿いでの盗難 が多く、県外へ持ち出されるケースが相次いでいます。スマートキーを悪用した「リレーアタック」被害も確認され、対策グッズの普及啓発 が課題です。

万引き

万引きは 1,861件(前年比+6.8%) と増加傾向が続いています。大型商業施設やドラッグストアでの発生が多く、被疑者の約4割が高齢者という特徴があります。

都市部では再犯率も高く、社会的孤立や経済困窮が背景 にあるケースが指摘されています。

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特殊詐欺(なりすまし型)

特殊詐欺は 120件(前年比+27.7%)、被害総額は 約4億円 に上ります。被害者の約5割が65歳以上の高齢者で、中通り地方(郡山市・福島市など)で全体の65%を占める 状況です。

県警は金融機関やコンビニ事業者と連携し、ATMでの注意喚起や不審電話対策を強化しています。

地域ごとの特徴的な取り組み

福島県では、県警を中心に防犯意識の向上や地域安全の確保に向けた取り組みが進められています。

県全体の制度に加え、主要都市や市町村ごとに防犯カメラの設置助成や啓発活動など、地域の実情に合わせた独自の対策が実施されています。

県全体の取り組み

福島県警:街頭防犯カメラ設置補助金制度

県警では、自治会や町内会などの地域団体を対象に、防犯カメラの設置費用の一部を補助する制度を設けています。

補助率は経費の2分の1以内、上限は50万円。侵入窃盗や車上ねらい、声かけ事案などの発生抑止を目的として運用されています。

(出典: 福島県警「街頭防犯カメラ設置補助金制度」

福島県防犯協会連合会:地域防犯活動の推進

公益社団法人福島県防犯協会連合会では、県警や自治体と協力し、地域住民による防犯活動を支援しています。

特殊詐欺防止の電話録音機貸出事業や、子ども向け防犯教材の提供、地域防犯パトロールの支援などを行っています。

(出典: 福島県防犯協会連合会

主要都市での取り組み

郡山市:防犯対策委員会の設置と市民啓発活動

郡山市では、市と警察、地域団体が連携する「防犯対策委員会」を設置しています。

市民の防犯意識向上を目的とした広報活動や、夜間のパトロール強化、犯罪被害防止のステッカー配布などを実施しています。

(出典: 郡山市 防犯対策委員会

いわき市:防犯カメラ設置支援モデル事業

いわき市では、町内会・自治団体などを対象に防犯カメラの設置費用を助成する「防犯カメラ設置支援モデル事業」を実施しています。

市内の犯罪抑止と地域の安全確保を目的に、公共空間を中心としたカメラ設置を推進しています。

(出典: いわき市 防犯カメラ設置支援モデル事業

二本松市:防犯カメラ設置補助金制度

二本松市では、自治会や地域団体を対象に、防犯カメラ設置費用を補助する制度を運用しています。

補助率は2分の1以内で、地域防犯の強化を目的とした取り組みとして活用が進んでいます。

(出典: 二本松市 防犯カメラ設置補助金

その他地域での独自性のある取り組み

会津若松市:安全安心施設設置等事業補助金

会津若松市では、商店街や地域団体を対象に、防犯カメラを含む安全施設の設置や維持管理にかかる費用の一部を補助しています。

補助率は2/3以内、限度額は50万円で、中心市街地の安全確保に寄与しています。

(出典: 会津若松市 安全安心施設設置等事業補助金

相馬市:防犯カメラ設置費用の補助制度

相馬市では、自治会や自主防災組織などが公共空間に防犯カメラを設置する場合、設置費用の90%(上限20万円)を補助する制度があります。

地域住民による防犯活動を支援し、犯罪抑止と安心安全な地域づくりを推進しています。

(出典: 相馬市 防犯カメラ設置費用の補助制度

福島県警:地域防犯指導隊の運用

福島県警では、警察署単位で「地域防犯指導隊」を設置し、ボランティアによる巡回・防犯啓発活動を支援しています。

子どもや高齢者の見守り活動、地域行事での安全啓発など、住民参加型の防犯活動が活発に行われています。

(出典: 福島県警 地域防犯指導隊

福島県における外国人犯罪の傾向

福島県では、外国人労働者や技能実習生の増加にともない、来日外国人による犯罪検挙数も年々変化しています。

全国的には都市圏に集中する傾向がありますが、東北地方では福島県を中心に、地方工業都市での増加が確認されています。

福島県における外国人犯罪は件数としては多くないものの、アジア圏(特にベトナム国籍)による窃盗型犯罪の増加 が顕著です。

今後は外国人労働者との共生・支援を前提とした防犯施策の充実が、地域の安全維持において重要な鍵となります。

(出典: 警察庁 令和5年版 犯罪統計書(確定値)

1. 外国人犯罪の割合と推移

令和5年の福島県内における来日外国人の刑法犯検挙人員は 約130人(全体の約1.5%) で、全国平均(約2.2%)を下回る水準です。

ただし、前年よりも約20%増加 しており、東北地方全体でも+39.0%の上昇が報告されています。件数としては少ないものの、増加率では全国上位にあたる地域となっています。

2. 国籍別ではベトナム国籍者が突出

令和5年の統計では、ベトナム国籍者が151人(前年比+91人、全体の約47%) と最も多く、次いで中国、スリランカ、フィリピンの順に続き、アジア圏が全体の約8割 を占めています。

このうち多くは技能実習・特定技能などの在留資格を持つ労働者層で、生活環境や雇用条件に関連した軽犯罪が中心となっています。

3. 犯罪種別の特徴

外国人による検挙の約8割が「重要窃盗犯(侵入盗・自動車盗・ひったくり・すり)」であり、とくに自動車関連犯罪の比率が上昇しています。

一方で、殺人・強盗などの凶悪犯罪はごく少数で、生活に密接した窃盗型犯罪が中心 です。

これは福島県を含む地方圏で共通して見られる傾向であり、都市部のような大規模組織犯罪ではなく、個人・小規模グループによる犯行が多い点が特徴です。

(出典: 福島県警 統計・治安情報

4. 地域性と背景

福島県では、郡山市・いわき市などの工業地帯や製造業地域 に外国人労働者が集中しています。

このため、生活圏内での万引き・自転車盗、交通関係法令違反、在留資格関連の違反などが検挙事例の中心です。

また、転居・出稼ぎを繰り返すケースが多く、犯罪後の追跡や再犯防止が課題となっています。

5. 県警による共生と防犯の取り組み

福島県警では「多文化共生社会の安全確保」を掲げ、外国人向けに英語・ベトナム語・中国語など多言語の防犯リーフレット を作成し、警察署や自治体窓口で配布しています。

さらに、外国語対応職員を配置した相談窓口を設置し、外国人住民との信頼関係構築と防犯意識の向上に努めています。

(出典: 福島県警 国際課 外国人支援・共生に関する取組

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まとめ

福島県の犯罪件数は、令和6年に 8,844件(前年比+10.5%) と増加し、全国的な減少傾向とは対照的に上昇しています。特に窃盗犯が全体の約7割を占め、万引きや自転車盗といった生活圏内の犯罪、自動車関連犯罪の増加が目立ちます。

また、特殊詐欺や侵入盗の増加も課題であり、都市部では生活型犯罪、郊外では侵入・窃盗型犯罪という構図が鮮明です。

地域ごとにみると、郡山市・福島市・いわき市の3都市で全体の約4割 を占め、それぞれ「生活圏型」「都市型」「沿岸型」と犯罪構成に違いが見られます。

一方、会津地域では観光地型の犯罪が散発的に発生し、地域特性が犯罪動向に強く影響していることが分かります。

県や各自治体は、防犯カメラ設置補助金や防犯指導隊などの制度を通じて、地域ぐるみの防犯体制を強化しています。

さらに、外国人住民が増える中で、県警は多言語対応や生活支援型の防犯啓発を進めており、「共生型防犯」 という新しい方向性が見え始めています。

また、福島県では住宅侵入盗の発生率が全国でも高く、重大犯罪の割合が上昇傾向にあります。その一方で、県は「犯罪被害者等支援計画」を策定し、被害者支援・再発防止にも力を入れている点が特徴的です。

総じて福島県は、「犯罪件数は上昇傾向だが、防犯体制・支援制度は全国的に見ても整備が進んでいる地域」といえます。今後も、地域特性に応じた防犯意識の向上と、官民が一体となった安全なまちづくりが期待されます。


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