千葉県の治安と犯罪率まとめ|移住前に知っておきたい防犯事情

千葉県は首都圏の一角として東京へのアクセスが良く、都市的な利便性と自然の豊かさを併せ持つ地域です。

人口が多く商業エリアも集中しているため、犯罪件数は全国的に見ても多い水準となっていますが、都市部と郊外では大きな差があるのが特徴です。

本記事では、千葉県警の公表データなどをもとに犯罪件数や犯罪率を整理し、地域ごとの治安の違いや防犯の取り組みを解説します。

移住や生活を検討する方に向けて、安心して判断できる情報をまとめていきます。

つくば防犯カメラ 代表 菊池 直輝
・茨城県防犯設備協会 所属
・防犯設備士
・第二種電気工事士

千葉県の治安の全体傾向

千葉県警の統計によれば、2024年の刑法犯認知件数38,394件で、2023年の37,538件から856件(+2.3%)増加。重要犯罪(殺人・強盗・放火など)は654件で、前年より113件の増加となっており、一定の警戒が必要です。(出典:千葉県警公式サイト

一方で、長期的な視点では大きな改善も見られます。

2002年には16万件を超える水準だった千葉県の犯罪件数は、その後減少傾向をたどり、2022年には約32,000件まで低下しました。この20年間で20%程度に抑え込まれてきたことになります。(出典:千葉県警公式サイト

これは、防犯カメラの設置拡大や青色パトロール、地域住民による自主防犯活動など、官民一体の取り組みの成果といえるでしょう。

ただし、2023年以降は再び微増に転じています。

人口が集中する都市部では自転車盗や侵入盗といった軽犯罪が目立ち、商業エリアや駅周辺の人の往来が多い場所を中心に件数が押し上げられています。

近県・東京都の比較

一都三県と茨城県を含めての比較で千葉県を見てみましょう。

2024年の人口1万人あたりの刑法犯認知件数を見ると、茨城県は約74.7件で最も高く、次いで埼玉県(約70.1件)、東京都(約66.9件)が続きます。

神奈川県(約49.6件)が最も低く、千葉県(約60.8件)は、それに次ぐ低い数値になっています。(出典:各都県警「令和6年中の刑法犯認知件数」)

都県 認知件数 人口 1万人あたり犯罪件数
東京都 94,752 14,178,000 約66.9件
神奈川県 45,716 9,225,000 約49.6件
埼玉県 51,667 7,372,000 約70.1件
千葉県 38,394 6,311,000 約60.8件
茨城県 21,095 2,823,457 約74.7件

犯罪率(人口比)から見た千葉県の治安の悪い地域ランキング

千葉県警の統計によると、2024年に最も犯罪発生率が高かったのは芝山町(117.5件/1万人)で、県平均を大きく上回る水準となりました。

芝山町は人口が少ないため、数十件規模の犯罪発生でも統計上の率が大きく跳ね上がる特徴があります。

続いて、千葉市中央区(100.2件)が2位にランクインしています。中央区は繁華街や商業施設が集中する地域で、窃盗犯や自転車盗が多発しやすい傾向にあります。

3位の酒々井町(86.4件)も小規模自治体であり、こちらも「実件数は限られるが比率が高い」という典型例といえます。

一方、野田市(85.3件)や成田市(84.8件)は人口規模が大きい中で高い数値を示しており、都市的な要因が影響していることが推測されます。

特に成田市は空港を抱える国際的な交通拠点であることが、犯罪件数の多さに結びついている可能性があります。

また、鴨川市や勝浦市などの観光地も上位に含まれており、観光客の流入に伴って軽犯罪が発生しやすい傾向が見られます。

順位 市区町村 犯罪発生率(件/1万人)
1位 芝山町 117.5
2位 千葉市中央区 100.2
3位 酒々井町 86.4
4位 野田市 85.3
5位 成田市 84.8
6位 鴨川市 83.0
7位 勝浦市 80.8
8位 富里市 79.7
9位 長柄町 79.1
10位 山武市 78.0

(出典:千葉県警察「令和6年中 市町村別刑法犯認知件数(確定値)」 千葉県警公式PDF

人口比と件数ベースの違い

犯罪発生状況を分析する際には、「件数ベース」と「人口比(犯罪率)」の両方の視点を持つことが重要です。

件数ベースは「どの地域で犯罪が多く発生しているか」を直感的に把握できますが、人口の大小に大きく影響されます。

例えば、千葉市や船橋市、松戸市といった都市部は人口が数十万人規模であるため、どうしても犯罪件数は多くなります。

しかし、人口で割った犯罪率で見ると、必ずしも突出して治安が悪いとは限りません。

人口が少ない町村では、統計的に1件あたりの影響が大きくなるため、数字が跳ね上がって見える現象が起こります。

たとえば芝山町(117.5件/1万人)や長柄町(79.1件/1万人)のような小規模自治体が上位に出やすくなりますが、生活実感としては「治安が極端に悪い」と感じられるわけではないケースも多いのです。

つまり、件数ベースは「絶対数の多さ」、人口比は「相対的なリスク」を示しており、それぞれの意味合いが異なります

「件数の多さ=生活のしづらさ」ではなく、「自分が住む予定の規模の地域でどの程度の割合で犯罪が起きているか」を確認することが大切です。

さらに、自治体ごとの防犯施策や地域の雰囲気をあわせて調べることで、統計だけに依存しない現実的な判断が可能になります。

犯罪件数ベースで見た千葉県の治安の悪い地域ランキング

千葉県で2024年に最も多くの刑法犯が認知されたのは船橋市(3,733件)でした。

船橋市は人口・商業施設・鉄道駅が集中する都市部であり、自転車盗や万引きといった軽犯罪が件数を押し上げています。

続く柏市(2,811件)市川市(2,731件)、松戸市(2,704件)も、いずれも人口規模が大きく東京へのアクセスが良い都市部で、駅周辺や繁華街での犯罪発生が目立つ傾向にあります。

5位には千葉市中央区(2,191件)が入り、県庁所在地として商業活動が活発な地域の特徴が表れています。

そのほか、市原市(1,576件)野田市(1,296件)といった中核都市も上位に並びました。

件数ベースで見たランキングは、人口規模や商業の集積が多い都市部に集中する傾向が顕著です。

これは、生活利便性が高い地域では人の流れが大きく、それに比例して犯罪発生件数も増えるためです。

順位 市区町村 認知件数(件)
1位 船橋市 3,733
2位 柏市 2,811
3位 市川市 2,731
4位 松戸市 2,704
5位 千葉市中央区 2,191
6位 市原市 1,576
7位 野田市 1,296
8位 八千代市 1,252
9位 習志野市 1,139
10位 成田市 1,136

※千葉県警察「令和6年中 市町村別刑法犯認知件数(確定値)」を基に算出

治安が比較的良いとされる地域

千葉県警の統計によると、2024年の刑法犯認知件数は都市部や交通の要所に集中する傾向が見られる一方で、犯罪率が比較的低い地域も存在しています。

たとえば、千葉市としては発生件数69.3件/1万人となっていますが、地域を分けてみると緑区は人口128,878人に対して発生率44.7件/1万人となっており、県平均と比べてもかなり低い数値を示しています。

船橋市、市川市、松戸市は件数ベースでは上位ですが、いずれも県平均は下回っており、千葉市の例のように主要駅周辺と市内他地域では異なる顔を持つといえるでしょう。

件数が多い地域は「人が集まる都市的環境」であることを意味しており、必ずしも生活が危険というわけではありません。

都市部は件数が多い一方で、防犯カメラや警察パトロールなどの対策も進んでいるため、実際の生活では安心材料も多いことを忘れてはいけません。

主要都市の主な防犯活動例

主要都市の主な防犯活動などをピックアップします。移住検討者としては、単なる犯罪件数ではなく、具体的な防犯活動なども調べてみると安心材料として強く参考になります。

千葉市

船橋市

  • 町会・自治会・商店会による自主防犯パトロール実績(月1回以上)がある団体への防犯カメラ設置費や維持費を補助する制度を提供
  • 「市民防犯推進協議会」や青色パトロールカーによる巡回、スクールガードの実施など、多様な防犯活動を展開

市川市

  • 防犯カメラ設置に関する条例に基づく届出制度や街頭カメラの管理・運用体制を整備
  • 自主防犯団体への防犯物品無償提供、自主防犯活動の支援を実施
  • 市川防犯協会と行徳防犯協会の2団体が、警察と連携し地域の防犯啓発や非行防止を推進

柏市

  • 柏市防犯協会が全22支部体制で地域に密着した防犯活動を行い、犯罪抑止に取り組む
  • 防犯指導員を委嘱し、講習会を通じて市民に防犯知識を普及する仕組みを運営
  • 柏駅周辺では事業者主体の自主的な防犯パトロール組織も活動。地域と警察の協力を促進

松戸市

  • 「松戸市警防ネットワーク」など、防犯用品貸与や補助、自主防犯活動団体の支援制度を整備
  • 「パトラン松戸チーム」というパトロール・ランニングによる市民参加型の防犯活動が盛ん
  • 「松戸市犯罪発生マップ」や安全安心メール配信など、住民への情報提供も積極的に実施

犯罪の種類別に見る千葉県の治安

千葉県警の統計によると、2024年の刑法犯認知件数38,394件のうち、最も多いのは窃盗犯で全体の約6割を占めています。

内訳では自転車盗が特に多く、駅周辺や商業施設に駐輪する際の無施錠が主な要因とされています。

また万引きや車上ねらいなど、生活圏に密接した犯罪が多数を占めている点が特徴です(出典:千葉県警察「令和6年中 市町村別刑法犯認知件数(確定値)」 千葉県警公式PDF)。

一方で、凶悪犯と呼ばれる殺人・強盗・放火・強制性交等は654件にとどまり、全体に占める割合は1割未満でした。

件数としては限定的ですが、社会的影響が大きいため県警は重点的に取締りを強化しています。

知能犯では詐欺が増加傾向にあり、特に高齢者を狙った特殊詐欺が依然として深刻な課題となっています。

電話やSMSを使った手口が多く、被害防止には家族や地域での声かけが効果的とされています。

風俗犯や薬物関連は件数自体は大きくありませんが、都市部を中心に一定数が報告されており、地域の治安に影響を与える要因となっています。

移住を検討する方にとって重要なのは、千葉県における犯罪の大半は凶悪事件ではなく、日常生活で注意すれば防げるケースが多いという点です。

自転車や自動車の施錠、窓やドアの二重ロック、怪しい電話への対応など、基本的な対策でリスクを下げることができます。

また、各自治体では防犯カメラの設置や青色パトロールの実施など安全対策を進めているため、生活環境の安全性は数字だけで判断せず、地域の取組み状況も併せて確認することが安心につながります。

増える特殊詐欺に対しての取り組み例

千葉県内では高齢者を狙った特殊詐欺が後を絶たず、県警の統計でも依然として被害件数・被害額ともに高止まりしています。

そのため、県と各自治体は協力し、住民の被害を未然に防ぐためのさまざまな対策を実施しています。

特に高齢者世帯を対象にした電話機器の設置支援や啓発活動は各市で積極的に展開されており、地域ごとの工夫が見られます。

以下に代表的な取り組みを5件紹介します。

船橋市:振り込め詐欺防止装置を高齢世帯に無料貸出

高齢者(65歳以上)がいる家庭向けに、電話に警告音と録音機能が搭載された詐欺防止装置を無料で貸し出す制度を実施。録音される仕組みで詐欺犯を抑止します。(出典:船橋市「振り込め詐欺防止装置を無料で貸し出します!」

柏市:特殊詐欺撃退録音機の無料取り付け

市在住の65歳以上の高齢者には、録音機能付きの固定電話機器を無料で設置。市の担当者やシルバー人材センターが訪問し、直接設置するという丁寧な対応も特長です。(出典:柏市「特殊詐欺(振り込め詐欺等)撃退録音機の無料取付」

千葉県(県全体):電話詐欺対策機器の補助制度と子どもによる啓発

市町村が高齢者に対し防犯機能付き電話の購入・貸与する事業に対し、補助金(最大100万円)を提供。また、小学校5年生による「確認はがき大作戦」で、孫から祖父母へ注意喚起のはがきを送付する取り組みも実施中です。 (出典:千葉県「電話de詐欺等被害防止について(報道発表)」

千葉市:迷惑電話防止機器設置への補助

被害が多いことを受け、千葉市では留守番電話機能や録音・ナンバーディスプレイ付き電話への補助制度を設け、住民の自衛努力を支える対策を進めています。(出典:千葉市「STOP!電話de詐欺」

市川市(参考範囲:相談・啓発活動)

市内で被害が多発していることを踏まえ、留守番電話設定や録音装置を利用し、詐欺被害を防ぐよう呼びかけ。市の公式ページでは、特殊詐欺の手口や対策についてのガイドが掲載されています。(出典:市川市「電話de詐欺」にご注意ください!」

関連記事:離れて暮らす高齢両親の防犯対策ガイド

外れ値から見る千葉県内で目立つ犯罪傾向

鴨川市:「その他侵入盗」33.3件/1万人

県平均(約5.3件)の6倍以上と突出。観光地特有の空き家や無人施設が狙われやすい可能性。

富里市:「非侵入窃盗(その他)」40.2件/1万人

県平均(約21.8件)の約2倍。商業施設や物流拠点での置き引き・万引きの多さが背景と考えられる。

山武市:「非侵入窃盗(その他)」39.7件/1万人

こちらも県平均の2倍近く、農産物や屋外物品の盗難が影響している可能性。

勝浦市:「その他侵入盗」21.0件/1万人

県平均の約4倍。観光地の宿泊施設や商店が狙われていると推測される。

習志野市:「自転車盗」25.6件/1万人

県平均(約11.8件)の2倍以上。駅周辺の密集や大学生人口の多さが要因のひとつ。

浦安市:「自転車盗」25.3件/1万人

習志野市と同様に高水準。テーマパーク来訪者や大規模住宅地の存在が影響か。

勝浦市:「オートバイ盗」14.5件/1万人

県平均(約1.2件)の10倍以上。市内外の移動手段として狙われやすい状況。

野田市:「自転車盗」24.2件/1万人

県平均の約2倍。人口規模が比較的大きい中で、駅周辺の被害が多い。

香取市:「その他侵入盗」16.8件/1万人

県平均の約3倍。農村部ならではの無施錠倉庫や小規模店舗が狙われやすいと推測。

八千代市:「自転車盗」22.4件/1万人

県平均の約2倍。都市部に近接するベッドタウン特性から、駅周辺での多発が目立つ。


(出典:千葉県警察「令和6年中 市町村別刑法犯認知件数(確定値)」 千葉県警公式PDF

各自治体での防犯対策補助金

千葉県内の自治体では、地域の防犯力を高めるために補助金制度を設けているところが多く見られます。

補助の対象は、防犯カメラやセンサーライトといった機器の購入から、地域団体による街頭防犯活動の設備投資まで幅広く、自治体によって特色があります。

移住を検討する方にとっては、自分が住む予定の市でどのような支援があるのかを把握しておくことが、防犯対策を進めるうえで安心材料になるでしょう。

以下では、主要都市を中心に代表的な事例を紹介します。

1. 船橋市

住居に設置する防犯対策用品(防犯カメラ、センサーライト、録画ドアホン、補助錠など)を対象に、購入費の半額を補助(上限20,000円/1世帯)。

対象となる商品を幅広く支援し、防犯機器の導入促進を図っています。 (出典:船橋市 住まいの防犯対策補助事業

2. 柏市(人口約43万人)

町会や自治会などの地域団体が街頭防犯カメラを設置する際、設置費用の4分の3を補助。

上限は新規30万円、更新20万円までで、地域の自主防犯活動の強化を後押ししています。(出典:柏市 街頭防犯カメラ設置補助事業

3. 松戸市(人口約50万人)

「市民参加型街頭防犯ネットワークカメラ事業」として、防犯カメラの購入や設置工事、通信機器などに対し、一般参加者は最大30万円、企業参加者は最大20万円を補助。

映像は市のサーバーで管理され、プライバシー配慮もなされています。(出典:松戸市 市民参加型街頭防犯ネットワークカメラ事業

4. 市川市(人口約50万人)

自治会・商店会など地域団体が設置する「カメラ付き防犯灯」について、設置費等に応じて補助率7.5/10(75%)、上限90,000円/基で支援されています。

他の補助制度に比べても防犯性能を備えた設備への補助としては手厚く、夜間の安心につながる施策です。(出典:市川市「防犯灯設置費等補助金」

5. 千葉県(県全体)

市町村が公共の場所に設置する防犯カメラや防犯灯に対し、カメラは新規1台あたり20万円、更新は10万円、防犯灯は5万円まで、設置費の2分の1以内で補助。

県全体での防犯インフラ強化をサポートします。 (出典:千葉県 防犯に係る市町村補助事業

まとめ

これまで千葉県の治安を犯罪率や件数、犯罪の種類、防犯対策など多角的に見てきました。

数値だけでなく地域の特性を理解することで、移住や生活拠点の選択に役立つ視点が得られます。

  • 犯罪件数が多い地域は人の流れが多い都市部で、中心は自転車盗や万引きなど軽犯罪。
  • 人口比で高く見える小規模自治体は、件数そのものは少ないことが多く、統計の見方に注意が必要。
  • 自治体の防犯カメラ設置、青色パトロール、特殊詐欺防止機器の補助など、地域ぐるみの取り組みは年々強化されている。

千葉県は「都市の利便性」と「郊外の落ち着いた環境」の両方を備えており、治安状況も地域によって大きく異なります。

統計の数字だけではなく、地域の特性や防犯体制を合わせて理解し、自分のライフスタイルに合った場所を探すことが重要です。

自治体情報を確認するだけではなく、気になる地域には実際に昼夜や平日・休日など時間帯を変えて足を運び、雰囲気や安全性を自分の目で確かめましょう。


つくば防犯カメラでは、防犯カメラの設置をメインに、信頼できる提携先と連携して各種防犯対策のご案内も可能です。

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