民泊を始めたばかりのオーナーの多くが抱える悩みのひとつが「防犯対策」です。
チェックイン・チェックアウトの立ち会いがなく、宿泊者の入れ替わりも頻繁な民泊では、盗難や無断宿泊、設備の破損など、思わぬトラブルが起きやすい環境にあります。
実際、民泊に関する苦情やトラブル相談は年々増加しており、「しっかり対策しておけばよかった」と後悔するケースも少なくありません。
この記事では、民泊オーナーが知っておくべき防犯の基本から、最新のカメラ・セキュリティ機器の選び方、トラブルを未然に防ぐ運用の工夫までをわかりやすく解説します。
初めて民泊運営を始める方、すでに運営中でトラブル防止を強化したい方に向けて、「安心・安全な民泊経営」を実現するための実践的なヒントをまとめました。
民泊に防犯対策が欠かせない理由
民泊は、ホテルや旅館に比べて運営の自由度が高い一方で、防犯面では弱点を抱えやすい宿泊形態です。
特に個人オーナーや新規参入者が多い民泊では、ルール整備や防犯システムの導入が後回しになり、トラブルに発展するケースも少なくありません。
国土交通省によると、令和7年5月時点で全国の住宅宿泊事業(民泊)の届出件数は50,746件に上ります。
民泊が全国的に広がる中で、各地の自治体では苦情や違法営業に関する相談が増加傾向にあります。 (出典:国土交通省 住宅宿泊事業法の施行状況)
新宿区が公表しているデータでは、民泊に関する苦情件数が令和2年度の80件から、令和6年度には561件へと約7倍に増加しています。
内容としては「ごみ・騒音・説明不足」など、宿泊者マナーや防犯管理に関わるものが中心です。
また、違法民泊(旅館業法違反)に関する苦情も令和6年度で231件にのぼり、地域との摩擦や安全面の課題が浮き彫りになっています。 (出典:新宿区「民泊の苦情について」)
こうした状況からも、民泊では「防犯対策=信頼性の証」といえます。
チェックインやチェックアウトの立ち会いがなく、宿泊者の入れ替わりが多い環境では、盗難・設備の破損・無断宿泊などが起こりやすく、防犯カメラや入退室管理システムの有無がトラブル防止の鍵となります。
民泊特有の防犯課題(ホテルとの違い)
ホテルや旅館では常駐スタッフによる監視体制が整っていますが、民泊ではオーナー自身が防犯管理の中心となります。
特に住宅街に立地する物件では、外部からの目が届きにくく、近隣住民からの不安や苦情が寄せられることも少なくありません。
そのため、カメラ・照明・鍵などの物理的な対策だけでなく、「地域と共存する防犯意識」が欠かせません。
防犯対策は単に事件を防ぐだけでなく、ゲストの安心感を高め、リピーターを増やす経営施策にもつながります。
実際に起きた民泊トラブル事例
民泊の増加にともない、全国各地でさまざまなトラブルが報告されています。
その多くは、防犯対策や管理体制の不備が原因となっています。ここでは、代表的なトラブルの傾向を公的データや実際の事例をもとに見ていきましょう。
盗難・無断宿泊などの不正利用
民泊では、チェックイン・チェックアウト時にスタッフが常駐していないことが多く、部外者の侵入や無断宿泊といったトラブルが発生しやすい環境です。
特にスマートロックなどの電子鍵を導入していない物件では、合鍵の複製や鍵の紛失による不正入室も報告されています。
一部では、宿泊者が予約期間を過ぎても滞在を続ける「居座り行為」や、宿泊者以外の第三者を招き入れるケースもあります。
こうしたトラブルを防ぐには、防犯カメラによる入退室の記録や、遠隔で施錠管理ができるシステムの導入が効果的です。
騒音・ゴミ問題・近隣トラブル
民泊トラブルの中で最も多いのが、近隣住民からの苦情です。
深夜の騒音、分別されていないゴミの放置、路上喫煙など、日常的なマナーに関する問題が後を絶ちません。
新宿区によると、令和6年度には届出住宅に関する苦情が561件、違法民泊に関する苦情が231件にのぼっています。(出典:新宿区「民泊の苦情について」)
苦情内容の多くは「ごみ・騒音・説明不足」などで、地域とのトラブルが民泊運営の大きな課題となっていることがわかります。
民泊運営では、地域住民の理解と協力が欠かせません。周辺環境に配慮した運営や、ゲストへのルール説明を徹底することが信頼維持につながります。
法令違反・無許可営業による行政指導
住宅宿泊事業法に基づく届出を行わず、無許可で営業している「違法民泊」も問題となっています。
国土交通省によると、違法事例は一時期に比べ減少しているものの、自治体による監視や是正対応は現在も続いています。(出典:国土交通省 住宅宿泊事業法の施行状況)
無許可営業が発覚した場合、行政からの改善命令や営業停止処分を受けることもあります。宿泊者の安全や地域との信頼を守るためにも、法令に沿った適切な運営体制を整えることが重要です。
設備破損・備品紛失などの損害トラブル
宿泊者による家具・家電の破損や、タオル・食器類の持ち帰りなどもよくあるトラブルです。
中には、監視カメラの設置を嫌がる宿泊者もいますが、共用部の映像記録は防犯・損害防止の観点から有効な証拠になります。
防犯カメラの存在を明示しておくことで、トラブル抑止効果が生まれるだけでなく、オーナー自身の安心にもつながります。
今すぐできる民泊の防犯対策
民泊のトラブルは、事前の準備と仕組みづくりで大きく減らすことができます。ここでは、民泊オーナーが今すぐ取り入れられる効果的な防犯対策を紹介します。
防犯カメラ・監視カメラの設置と選び方
防犯カメラは、民泊における最も基本的かつ有効な防犯手段です。宿泊者の入退室状況を把握できるほか、トラブル発生時の証拠としても活用できます。
国土交通省が定める「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」では、事業者に対して宿泊者の安全確保と適切な管理体制の整備が求められています。
これは、カメラや入退室管理システムなどの導入を通じて、安全性を高める取り組みを推奨するものです。(出典:国土交通省 住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン))
カメラの設置は共用部(玄関・出入口・駐車場など)に限定し、プライバシーを侵害しない範囲で行うことが重要です。
録画機能付きの屋外対応モデルや、スマートフォンで遠隔確認できるタイプを選ぶと、管理の手間を大幅に減らせます。
ロック・施錠システムの導入
合鍵の紛失や不正コピーを防ぐため、スマートロックの導入が効果的です。暗証番号やカードキー方式に加え、宿泊ごとにパスコードを自動変更できるモデルも登場しています。
遠隔で施錠・解錠ができるタイプを選べば、チェックイン対応の省力化とセキュリティ強化を同時に実現できます。
特に「予約者以外の入室を防ぐ」「滞在期間外の出入りを制限する」といった運用ルールを設定することがポイントです。
入退室管理システムや遠隔監視の活用
民泊では、オーナーが現地に常駐できないことが多いため、入退室ログを記録するシステムの導入が有効です。
クラウド型の管理ツールを利用すれば、スマートフォンから宿泊者のチェックイン・チェックアウト状況を確認できます。
また、モーション検知機能付きのカメラや、AIによる人物識別機能を搭載したモデルを組み合わせることで、不審な動きや侵入を自動検知できます。これにより、夜間や長期不在時の防犯対策を強化できます。
火災・災害時の安全対策
防犯だけでなく、防災の観点からも備えが必要です。住宅宿泊事業法では、火災報知器・消火器の設置が義務づけられています。
また、避難経路図や非常時の連絡先をわかりやすく掲示しておくことで、宿泊者の安全確保につながります。(出典:国土交通省 住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン))
防犯と防災を両立させることが、安心して選ばれる民泊運営の基礎になります。
チェックイン・チェックアウト時の防犯ポイント
チェックイン・チェックアウトの時間帯は、トラブルが発生しやすいタイミングです。宿泊者とのやり取りをスムーズにするため、本人確認の方法を明確にしておきましょう。
例えば、オンライン本人確認システム(eKYC)の導入や、チェックイン時に玄関カメラで確認する方法が有効です。
また、チェックアウト時には室内の確認を徹底し、備品の紛失や設備の破損がないかを早期に把握することが大切です。
防犯カメラ導入のメリット・種類・設置場所
民泊の安全性を高めるうえで、防犯カメラの導入は欠かせません。トラブル防止だけでなく、宿泊者・近隣住民・オーナーのすべてにとって安心につながる設備です。
ここでは、防犯カメラを導入することで得られる具体的なメリットと、設置時の注意点を見ていきましょう。
防犯カメラ設置の主なメリット
1つ目のメリットは犯罪抑止効果です。
玄関や通路など、出入りが確認できる位置にカメラを設置することで、「監視されている」という意識が生まれ、不正行為を未然に防ぐことができます。
2つ目はトラブル発生時の証拠保全です。
宿泊者間のトラブルや設備破損などが起きた場合、録画映像が客観的な証拠として役立ちます。警察や保険会社への対応をスムーズに進めるうえでも有効です。
3つ目はオーナー自身の安心感です。
遠隔で映像を確認できるシステムを導入すれば、離れた場所からでも物件の状況を把握でき、安心して民泊を運営できます。
カメラの種類と特徴
防犯カメラには、用途に応じたさまざまな種類があります。
- 屋外用カメラ:防水・防塵仕様で、出入口や駐車場など外部の監視に最適。
- 屋内用カメラ:室内共用部(玄関・リビングなど)に設置し、宿泊者の出入りを確認。
- ネットワークカメラ(IPカメラ):Wi-Fiを通じて遠隔監視が可能。クラウド録画にも対応。
- AI検知カメラ:人の動きを自動検知し、不審行動をアラート通知。
目的に応じて、録画機能・暗視対応・マイク付きなどの仕様を比較し、必要な性能を選ぶことが重要です。
最新機能を備えた防犯カメラの選び方
最近では、AI画像解析を活用したモデルが増えています。 「人」や「車」などを自動識別し、不要な通知を減らせるのが特徴です。
また、モバイルアプリ連携により、リアルタイムで映像を確認したり、録画データをクラウドに保存したりできる機種もあります。
設置コストを抑えたい場合は、バッテリー内蔵型やソーラーパネル対応モデルも選択肢です。屋外電源が取りにくい物件でも、簡単に導入できます。
設置場所とプライバシーへの配慮
カメラ設置の際は、防犯とプライバシーのバランスを取ることが重要です。
玄関・駐車場・通路など共用部を中心に、宿泊者の私的空間(寝室・浴室など)には設置しないことが原則です。
また、カメラの設置を明示する案内文を掲示しておくと、宿泊者に安心感を与えつつ、不正行為の抑止にもつながります。
録画データの保管期間や利用目的についても、プライバシーポリシーで明確にしておくとより安心です。
導入手順と費用の目安
防犯カメラの導入には、「機器購入」「設置工事」「設定」「保守」のステップがあります。
費用は設置箇所数や機種によって異なりますが、一般的には1台あたり3万円〜10万円前後が目安です。
屋外工事や電源配線を伴う場合は、専門業者への依頼が推奨されます。
設置位置の相談から配線ルートの設計まで、経験豊富な防犯設備士に任せることで、トラブルを防ぎながら最適な環境を整えられます。
つくば防犯カメラでは、民泊や店舗など各施設の利用環境に合わせた機種選定や設置プランを提案しています。
運営規模や予算に応じた柔軟なプラン設計も可能なため、導入前に相談することで失敗のない防犯対策が実現できます。
防犯サービス・セキュリティ会社の比較と選定ポイント
民泊の運営では、防犯カメラや鍵の管理だけでは対応しきれないケースもあります。
特に長期運営や複数物件を管理するオーナーにとっては、外部の防犯サービスを組み合わせることで、より高い安全性と効率性を実現できます。
ここでは、代表的なセキュリティ会社の特徴や導入時のポイントを紹介します。
主な民泊向け防犯サービスの特徴
代表的な防犯サービスとして、セコム・ALSOK・トリニティーなどがあります。
それぞれが提供するシステムには特徴があり、民泊の運営形態に応じて選ぶことが大切です。
- セコム:警備員による現地駆けつけ対応が強み。火災や侵入だけでなく、宿泊者のSOSにも対応可能。
- ALSOK:遠隔監視サービスに加え、異常信号を検知した際の迅速な通報・出動が特徴。
- トリニティー:中小規模施設向けに柔軟なプラン設計が可能で、費用を抑えながら監視体制を構築できる。
これらのサービスは、民泊の「無人運営」と非常に相性が良く、オーナー不在時のトラブル対応や緊急時の現場確認を代行できる点が大きな利点です。
コールセンター・監視オプションの違い
防犯サービスを選ぶ際は、コールセンターの対応体制にも注目しましょう。24時間対応の監視センターを持つサービスであれば、宿泊者や近隣からの緊急連絡にも迅速に対応できます。
特に無人チェックイン型の民泊では、深夜に発生するトラブル(騒音、設備不具合、侵入通報など)に備えて、遠隔サポート付きプランを導入しておくと安心です。
AIカメラとの連携で自動検知・自動通報ができるタイプも増えており、人的負担を大幅に軽減できます。
費用・料金プラン比較と導入シミュレーション
防犯サービスの費用は、プラン内容や対応範囲によって異なります。
一般的な目安
- 初期導入費:5万円〜20万円程度
- 月額費用:3,000円〜10,000円程度
火災監視・侵入検知・非常ボタンなどのオプションを加えると費用は上がりますが、実際の稼働コストはトラブル防止による損失削減で十分補えるケースが多いです。
導入前には、対象物件の規模・構造・稼働率を踏まえてシミュレーションを行いましょう。
複数の見積もりを比較し、「駆けつけ対応あり/なし」「遠隔監視のみ」などの違いを明確にすることが大切です。
導入事例と利用者の声
実際に防犯サービスを導入した民泊オーナーの多くは、「宿泊者の安心感が向上した」「トラブル対応が迅速になった」といった効果を感じています。
特に、ゲストから「安全で快適だった」と高評価の口コミを得ることで、集客面にも好影響を与えるケースがあります。
また、防犯設備や監視サービスの導入をアピールすることで、「安全性を重視する宿泊施設」としてのブランディング効果も期待できます。
民泊の防犯強化で安心経営|オーナーができる運用の工夫
防犯カメラや鍵のシステムを整備しても、最終的な安全性を左右するのは「日々の運営の質」です。民泊の運営において、オーナーが意識すべき防犯体制づくりや信頼獲得の工夫を紹介します。
スタッフ教育と防犯ルールの共有
複数の物件を運営している場合や清掃スタッフを外部委託している場合は、全員が同じ防犯意識を持つことが大切です。
入退室時の戸締まり確認、忘れ物や破損の報告ルールなど、基本的な手順をマニュアル化しておきましょう。
また、宿泊者に対してもチェックイン時や案内資料で「防犯上の注意事項」を共有することが重要です。カメラ設置箇所や鍵の管理方法を明示しておくことで、ゲストも安心して利用できます。
ゲスト向けルール説明とトラブル防止策
民泊トラブルの多くは、「ルールを知らなかった」ことが原因で起こります。騒音・ゴミ出し・共用部の使用ルールなど、基本的なマナーを多言語で案内しておくと効果的です。
特に外国人ゲストが多い物件では、ピクトグラム(図解)を活用した説明書を置くと分かりやすく、誤解を防げます。
また、宿泊予約サイト上にも防犯・安全に関する説明を記載しておくことで、トラブル防止と信頼向上の両方につながります。
遠隔対応・スマホアプリ連携の活用
民泊運営では、オーナーが常に現地にいなくても対応できる仕組みが求められます。
スマートロック・監視カメラ・センサーなどをクラウド管理できるアプリを活用すれば、異常検知や緊急連絡を即時に受け取る体制を整えられます。
たとえば、入退室履歴を自動記録するアプリや、AIカメラと連携して不審行動を通知するシステムを導入すると、管理の精度が大きく向上します。
これらのデジタルツールは、省力化と防犯性の両立に欠かせません。
苦情・トラブル発生時の対応手順
トラブルが起きたときこそ、迅速で誠実な対応が信頼を左右します。宿泊者や近隣住民からの連絡には、感情的にならず、事実関係を正確に把握することが重要です。
カメラ映像や入退室ログを確認し、必要に応じて警察や保険会社に相談するなど、対応フローを事前に決めておくことで冷静に対処できます。
また、トラブル対応履歴を記録しておけば、次回以降の改善やマニュアル更新にも役立ちます。
防犯対策をアピールして信頼を高める
防犯への取り組みは「コスト」ではなく「価値」として伝えることが大切です。宿泊者は、安心できる環境を提供してくれる施設を自然と選びます。
ウェブサイトや予約ページで「防犯カメラ設置」「スマートロック完備」「緊急対応体制あり」といった取り組みを明示することで、信頼感が高まり、リピーター獲得にもつながります。
地域との協力体制や防犯意識の高さをアピールすることも、他施設との差別化に有効です。
まとめ|これからの民泊に必要な防犯対策と安心経営のために
民泊の運営において、防犯対策はもはや「プラスアルファ」ではなく、信頼経営のための必須要素です。
チェックインやチェックアウトの無人化が進む一方で、盗難・騒音・無断宿泊などのトラブルは後を絶ちません。
特に都市部を中心に、民泊に関する苦情件数が増加していることからも、適切な管理体制の重要性が明らかです。
防犯カメラやスマートロックの導入はもちろん、スタッフ教育やルールの明確化、遠隔管理システムの活用など、設備と運用の両面から防犯を強化する姿勢が求められます。
安全対策が行き届いた民泊は、宿泊者の満足度が高まり、結果的にリピート率や口コミ評価の向上にもつながります。
また、防犯対策は地域との信頼関係を築くうえでも欠かせません。「安心して利用できる施設」としての評判が広がることで、長期的な運営の安定を実現できます。
つくば防犯カメラでは、民泊・店舗・オフィスなどの環境に合わせた防犯カメラ設置やセキュリティ機器の提案、導入サポートを行っています。
民泊の形態や物件の規模に応じた最適なプランをご案内できますので、まずはお気軽にご相談ください。
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