2025年5月に立川市の小学校で発生した襲撃事件を受けて、学校防犯の在り方について社会的な議論が高まっています。
私自身も防犯の専門に携わる者として、この問題について感じていることをお伝えします。
結論から申し上げると、「小学校の防犯強化」は非常に難しい課題だと考えています。
その理由は、今回のような事件の「動機」が、従来の防犯設計では対応が難しいタイプであるためです。
犯罪機会論では対処できない動機
今回の事件では、金銭目的の犯行ではありませんでした。
仮に金品を目的とした侵入であれば、「犯罪機会論(※)」に基づいて、犯罪企画者のリスクとリターンをコントロールすることで防犯設計が可能です。
※犯罪機会論の1つである「人は犯罪を実行する前に、リスク・得られる利益を天秤にかける」という理論
しかし、今回のように明確なリターンがないにもかかわらず、重大なリスクを冒すタイプの犯行に対しては、従来の理屈が通用しません。
これに対応するためには、オフィスビルや重要施設のように、常時警備員を配備し、複数の認証システムを備えるといったレベルのセキュリティが必要になります。
学校防犯にかかるコストと現実的な限界
現在の日本の小学校は、防犯を主目的として設計されていません。
仮に本格的な防犯設備を後付けで導入しようとすれば、小規模な学校でも1億円規模のコストがかかると予想されます。
全国にある小学校(約19,000校)に対して同様の投資を行うと、単純計算で2兆円近い予算が必要となります。
現実的にこの予算が確保される可能性は低く、公立学校すべてに本格的な防犯体制を整備するのは難しいのが現状です。
防犯格差と今後の展望
このような現実の中で、今後は「防犯格差」が広がっていくと考えられます。
たとえば、予算がある都市部や私立校では防犯が進み、地方や小規模な学校では従来通りの体制が維持される。すでにアメリカではそのような二極化が起きています。
防犯設備の価値をどう伝えるか
防犯設備の価格は今後、技術革新と普及によりある程度下がっていくと思われます。
ただし、「価格が下がれば普及する」という単純な話ではないとも感じています。
設備に対する「費用対効果」が可視化されておらず、導入の判断が難しいという声も多く聞きます。
防犯業界全体として、そうした「費用対効果」や「必要性」に関する情報発信が不足しているのが現状です。
警察や防犯協会などがデータを公表している場合もありますが、一般消費者が能動的にそうした情報を探しに行くことは稀です。
だからこそ、私たちのような現場に近い民間事業者こそが、公的機関のデータをかみ砕いてわかりやすく届けていくべきだと考えています。
それが、業界全体の信頼向上や社会的理解につながるはずです。
参考記事:「防ぎようがない」小学校侵入・暴行事件で浮かぶ学校防犯の難しさ
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6538175
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